2019年05月15日号
次回6月3日更新予定

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ハイ・アート/ロウ・アート

High Art/Low Art

高級芸術とポピュラー(大衆)芸術の意。現代美術の文脈においては、1939年にC・グリーンバーグが(多分にH・ブロッホの影響を受け)行なったアヴァンギャルド(前衛)/キッチュ(後衛)の区分がひとつの開始点となりうる。彼は、アヴァンギャルドを「イデオロギーの混乱と暴力のさなかで文化を推進し得る道を探す」ものと位置づけ、キッチュ=大衆芸術を「現代生活における見せかけにすぎぬもの全ての縮図」と断じた。グリーンバーグが挙げた対比例のひとつは、ブラックの絵画と『サタデー・イヴニング・ポスト』の表紙絵であるが、後者の作家N・ロックウェルはいまや美術館で展覧会が開催される=「高級芸術」の画家と捉えることも可能である。つまり、それがハイ/ロウの区分に伴う歴史的な限界として指摘される点であり、さらには「真正の芸術」をそれ以外のものから区別したT・W・アドルノらも標的とされ、彼らの「二元論」「近代主義」、および「エリート主義」に多くの批判が集まった。特にP・ブルデューが高級芸術を「文化資本」を持つ階層の「卓越化(ディスタンクシオン)」と論じたことは社会学的側面からのアプローチとしては特筆に値する。また、それを踏まえた議論が、主に90年代のアメリカ合衆国において社会学者や分析哲学者の間で盛んに交わされた。そこで傾向として見られたのは、ラップ音楽などのポピュラー芸術に正統性を与えることにより社会的に構築された抑圧機能としてのハイ/ロウ区分を無効にするような議論である。しかし、美学的考察が十分とはいえない場合もあり、芸術それ自体に寄り添い社会との関係を思考しようと試みたグリーンバーグやアドルノの論を説得的に塗り替ええたかについては疑問が残るところであろう。

著者: 長チノリ

参考文献

  • 『グリーンバーグ批評選集』, , C・グリーンバーグ(藤枝晃雄編訳), 勁草書房, 2005
  • 『ポピュラー芸術の美学』, , R・シュスターマン(秋庭史典訳), 勁草書房, 1999
  • The Routledge Companion to Aesthetics(2nd ed.), “High Art vs. Low Art”, John A. Fisher, Routledge Press, 2005

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