2019年09月15日号
次回10月1日更新予定

Artwords(アートワード)

twitterでつぶやく

ピアッシング

Piercing

ピアス(身体の一部に貫通させた穴を通して付ける装身具の総称)の動名詞形で「穴をあけること」を意味し、一般にはピアス穴をあけてピアスを身に付けられるようにすることを意味する。また、日本では「ピアッシング(ピアス)」という呼称は耳へのものに限定して使われることが多く、耳以外の部位に行なわれるピアッシングは「ボディ・ピアッシング」と呼ばれる。日本でファッションとしてのピアスが普及したのは1970年代頃からとされ、当時の厚生省は「人体に穴をあける」行為を推奨しておらず、ピアスをあける器具の一般への販売が医師法に抵触するという見解を示していた。その後80年代に入ると女性誌『an・an』がピアス特集を組むなど言説が増加し、「ピアッシング講座」「自己表現としてのピアッシング」といった肯定的なものから、「規範からの逸脱」「炎症の危険性」といった否定的なものまで、賛否両論の様相を呈した。こうした議論の背景にはピアスが「身体加工(ピアッシング)」と「装身具(ピアス)」という二つの側面を持つ両義的な装置であることが関係している。装身具を「身体的な人格」との結びつきから規定した社会学者ゲオルク・ジンメルの定義に倣えば、ピアスは「身体加工」という点では人格と結びついた装飾であるが、「装身具」という点では代替可能な、非個人的なものであるといえる。「自己表現」という側面にせよ、それが「身体加工」に根差すのか「装飾性」に根差すのかは断定し難い。また、タトゥーを「無条件に親密な装身具」とするジンメルの立場は身体加工の(不)可逆性を基準しており、それゆえ、所与の身体を前提としている。ピアスによる自己表現の機能を所与の身体からの逸脱に見出すのならば、耳へのカジュアルなピアッシングはその機能を担っているとは言い難い。他方、自己表現を求める人々の間ではより過激なピアッシングが志向されている。身体加工の体験談や画像の投稿サイト「BME(Body Modification Ezine)」を主宰するシャノン・ララットは、99年から過激な身体加工を参加条件とした身体改造コンペティション「ModCon」を開催しており、参加者には舌先を二股に裂く「スプリット・タン」や、口内から目の下に向かって縦に貫通させる「ニック」など、過激なピアッシングが見られる。ピアスをめぐる議論にはジンメルの示したような両義性がどのような配分にあるのか、また「身体加工」そのものが社会規範上どのように捉えられているのかという、時代的かつ地域的な意識の分析が必要だろう。

著者: 小林嶺

参考文献

  • 『ピアッシング・バイブル』, 間宮英三, コアマガジン, 1998
  • 『奈良女子大学社会学論集』No12, 「現代日本におけるピアスの普及過程 新聞および雑誌記事の普及過程」, 雪村まゆみ, 2005
  • 『白梅学園大学・短期大学紀要』No.42, 「日本の若者におけるピアッシング行為に関する一考察 自傷行為との関連を中心に」, 金愛慶, 2006

関連ワード

関連人物

▲ページの先頭へ

アートワード検索

アートワードを検索

文字の大きさ