2019年08月01日号
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ベス単

Besu_tann (Vest Pocket Kodak)

1912年にイーストマン・コダック社が発売した、ベスト判(4☓6.5cm)フォーマットの写真を作るカメラの「ヴェスト・ポケット・コダック」(Vest Pocket Kodak)のうち、単玉レンズ付きのもの。ヴェスト・ポケット・コダックはコダック社としては初の金属製ボディのカメラであり、大量生産に向いていたのに加えて、軽量・小型の扱いやすいカメラであったため、広く一般に人気を呼んだ。発売後まもなく日本にも輸入されており、とくに単玉レンズ付きのモデルは、ヴェスト・ポケット・コダックのなかでも最も安価で、フィルム1本の単価も、それまでに普及していたブローニー判(6☓9cm)よりも安く済んだことから、入門者用のスナップ・カメラとして、アマチュア層を中心に高い人気を博した。また、日本独自の現象として、ベス単の絞りを規定値より大きめに設定することで、ソフトフォーカス効果を生みだす「ベス単フードはずし」と呼ばれる方法や、フードの穴を削って同様のソフトフォーカス効果を作りだす手法が流行し、ベス単人気を後押しした。こうした日本におけるベス単の独特の用いられ方は、芸術写真の制作における重要な技法のひとつとなり、ベス単を用いて制作を行なう作家たちに対する「ベス単派」という呼称も生まれた。なお、ヴェスト・ポケット・コダックは1926年に製造が中止されており、まさに大正期と同時に生まれ、また終わりも同じくした名機であったと言える。

著者: 冨山由紀子

参考文献

  • 『愛されるベス単』(現代カメラ新書 No.29), 鈴木八郎、秋谷方, 朝日ソノラマ, 1977

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