2019年06月01日号
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ミニマル・ミュージック

Minimal Music

ある音型の反復や引き延ばしから成り、その際に生じる音響の微細な差異や変化に焦点を当てた音楽。1960年代にL・M・ヤングらのアメリカ人作曲家によって考案された。ミニマル・アートと同時期に発生したことから、この名称が用いられるようになった。ミニマル・テクノやエレクトロニカにとって源流とも言えるだろう。「ミニマル・ミュージック」というタームの起源がミニマル・アートに負っているのは周知の通りで、単純な素材の反復や並置からひとつの作品が構成されるという点で共通している。だが、実際には両者の美的連関はそれほど強くはなく、むしろ同時代的な要因のほうが大きい。68年にM・ナイマンが美術におけるミニマリズムを音楽に転用し、タームとしてのミニマル・ミュージックが誕生した。しかし、L・M・ヤングの《Well Tuned Piano》も、T・ライリーの《In C》も共に64年の作品であり、音楽におけるミニマリズムはすでに以前から実践されていたといえる。上述二人にS・ライヒ、P・グラスを加えた計4人がミニマル・ミュージックの第一世代だが、各々の音楽的な傾向は異なる。ヤングとライリーがドローンや旋法を主体とする、どちらかといえば静的な趣向を持つのに対し、ライヒとグラスの音楽は複雑な対位法的テクスチュアやポリリズムに着目した動的なものだ。それでもなお、この4人の音楽が一括りに「ミニマル・ミュージック」と称されるのは、具体的な方法は異なるものの、それぞれが反復や音の引き延ばしといった音楽生成のプロセスそのものに光を当てたからだろう。70年代以降、ライヒやグラスは映像を取り入れるなどして、「ミニマリスト」からの脱却を図った。また、ヨーロッパではペンデレツキ、ペルト、リゲティらがミニマル・ミュージックの方法論を用い始めた。今日では、ミニマル・ミュージックは反復を主体としたひとつの技法として定着している。

著者: 高橋智子

参考文献

  • 『ミニマル・ミュージック その展開と思考』, 小沼純一, 青土社, 1997
  • 『実験音楽 ケージとその後』, マイケル・ナイマン(椎名亮輔訳), 水声社, 1992
  • 『アメリカン ミニマル・ミュージック』, ウィム・メルテン(細川周平訳), 冬樹社, 1985
  • Writings on Music 1965-2002, Steve Reich, Oxford University Press, 2002
  • Four Musical Minimalists, Keith Potter, Cambridge University Press, 2000

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