2019年06月15日号
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ライヴ・エレクトロニクス

Live Electronics

ライヴ・エレクトロニクスとは、演奏時にリアルタイムに、電子的あるいは電気的に、音響を発生させて変調させる音楽のことである。磁気テープに固定する「電子音楽」ではなく「生演奏されることを念頭に置いた電子音楽」(トマス・ホルムズ)として登場した。ライヴ・エレクトロニクスの歴史的背景には二つの要請があった。ひとつは、スタジオで磁気テープに固定される電子音楽では「排除」されていた、生演奏という人間のリアルタイムな反応を音楽作品のなかに復活させたいという要請である。この意味では、ライヴ・エレクトロニクスは1950年代の電子音楽の進化形である。またもうひとつは、演奏時の最終的な音響結果を不確定なままにしておこうとする、J・ケージ的な不確定性の要請である。ライヴ・エレクトロニクスとして言及される作品に、ケージの《カートリッジ・ミュージック》(1960)や、ソニック・アーツ・ユニオンの4人の作曲家による作品がある。ライヴ・エレクトロニクスは、演奏時にリアルタイムに音響を操作できるがゆえに、ケージ的な「演奏において不確定な音楽作品」を実現するのに都合のよい音楽形態として活用されたと言えるだろう。とはいえ、テクノロジーが発展し、エレクトロニクスを用いてリアルタイムに音響操作することがとりわけ難しいことではなくなってからは、「ライヴ・エレクトロニクス」という名称を使うことにはほとんど意味はないかもしれない。あくまでも、最終的な音響結果を磁気テープに固定しなければならなかった電子音楽の次に登場したエレクトロニクス音楽として、歴史的に過去の電子音楽の一形態として理解すべきだろう。

著者: 中川克志

参考文献

  • “3. Live electronic music”, Nicholas Collins, 2007
  • The Cambridge Companipon to Electronic Music, Nick Collins, Julio d'Escriván eds, Cambridge University Press, 2007
  • Electronic and Experimental Music (2nd editioin), Thomas B. Holmes, Routledge, 2002
  • Electronic and Experimental Music (3rd editioin), Thomas B. Holmes, Routledge, 2008

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