2019年08月01日号
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ラウムプラン

Raumplan(独)

オーストリアの建築家、アドルフ・ロースが提唱した、部屋割りを階ごとに平面的に考えるのではなく、三次元の展開において考えるとした、建築が作り出す空間についての思考である。ラウムプランにおいて、各部屋はその目的と意味とに対応しながら、水平、垂直方向の大きさを自在に獲得する。そして各部屋は相互に関係づけられながら、全体の空間を分節し、各々の位置を占め、固定的な階層に規制されずに、立体的に配置される。かくして空間中に無駄なく、各室を配置できることで経済性も高まる。こうした考え方は、ロースが新築ではなく、改築の計画を多く担当していたことにも由来する。ラウムプランによって実現された建築は少数であり、初期の作品の《シュトラッサー邸》(1919)、ダダイズムで知られる詩人のトリスタン・ツァラの自邸(1926)、そして最高傑作と評される《ミュラー邸》(1930)などが、その実例となる。建物内部のシークエンスのなかで重要な役割を果たしたのが階段であり、レベルの相違した床を繋げ、空間の連関性を規定し、抑揚をもたらす。ロースは、歴史主義から脱却し、実用様式を志向した『近代建築』(1896)の著者でもある建築家オットー・ワーグナーの思考を継承している。また、建築家ヨゼフ・マリア・オルブリッヒやヨーゼフ・ホフマンらの美的虚飾に対して、ロースが批判的な立場にあったことが挙げられる。それは彼の代表的な論文「装飾と犯罪」(1908)からもうかがえるだろう。装飾を排し、合理主義、実利主義に基づいた建築の本質を求めたラウムプランは、モダニズムの成立期において新しいデザインを切り開く先駆的役割を果たした。

著者: 椚座基道

参考文献

  • 『装飾と犯罪』, アドルフ・ロース(伊藤哲夫訳), 中央公論美術出版, 2011
  • 『アドルフ・ロース』, 伊藤哲夫, 鹿島出版会, 1980

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