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リバティ・デパート
Liberty Department Store
アーサー・レイゼンビー・リバティがロンドンに開業。新しいデザイン・販売上の試みを他に先駆けて行ない、ヴィクトリア時代後期における美的「趣味」の形成に大きく貢献した小売店。1875年、リージェント・ストリートに開いた小さな店舗で、絹製品に加え、日本の陶磁器・扇子・屏風等を含む東洋の品々を売り始めた。84年、建築家E・W・ゴッドウィンが責任者となり服飾部門が開設され、社内でデザインしたゆったりした仕立てのドレスを販売した。85年には「チェシャム・ハウス」を増床、地階は「イースタン・バザール」と呼称され、絨毯や室内装飾品等を揃えていた。と同時に、機械製によるテキスタイルや家具等の製品を提供し、リバティ製品は先進的なデザインとみなされ、国際的に人気を博す。リバティは、デザイナーの匿名性を保つ方針を推進した。同社には、アーツ・アンド・クラフツ展覧会協会のメンバー達もデザインを提供したが、参加した多様なデザイナーの個性には調整が加えられて様式上の差異が減り、共通してそれと認識可能なスタイルが付与されて生まれたのが、リバティ・スタイルである。イタリアではアール・ヌーヴォーが「スティレ・リバティ(リバティ・スタイル)」と呼ばれたことからも、その一貫したスタイルが認められていたことがわかる。リバティに雇用されたデザイナーには、テキスタイルにチャールズ・ヴォイジー、リンジー・バターフィールド、アーサー・シルヴァー、金工では、アーチボルド・ノックスがいる。顧客には、フレデリック・レイトン、エドワード・バーン=ジョーンズ、J・M・ホイッスラーら画家やオスカー・ワイルドなどがいた。同店は、唯美主義運動およびジャポニスムの流行を先導する存在であった。
著者: 竹内有子
参考文献
- 『ドキュメント リバティ百貨店』, アリソン・アドバーガム(愛甲健児訳), PARCO出版局, 1978
- The Liberty Style, Victor Arwas, Academy Editions, 1979
- 「リバティ・スタイル」展カタログ, 東京都庭園美術館、国際芸術文化振興会企画編, 国際芸術文化振興会, 1999
- 『リバティ・デザイン 「文化資本」としての「よき趣味」』, 山田眞實, 創元社, 1999
参考資料
- リバティ・ジャパン(リバティの歴史), http://www.liberty-japan.co.jp/history/page01.html
- Liberty London, http://www.liberty.co.uk/