2019年08月01日号
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ヴォーティシズム

Vorticism(英)

1910年代の半ばに興ったイギリスの芸術運動。渦巻派とも言う。12-14年に各地で相次いで開催されたイタリア未来派展、およびF・T・マリネッティのロンドン来訪が急進派の若い芸術家たちを刺激し、機械の美やダイナミズムを讃美するグループの結成へとつながった。彼らの作品では労働やダンス、戦争の一場面といった動的な主題が描かれるほか、画面を鋭角に切り込むコンポジション、フランスのキュビスムの影響をうかがわせる抽象的かつ幾何学的な形態がしばしば導入された。なかでもグループの中心的役割を担った画家のウィンダム・ルイスは、セザンヌら後期印象派を高く評価する批評家ロジャー・フライに対抗し、集会場と美術学校を兼ねた「レベル・アートセンター(Rebel Art Center)」を14年に設立した。間もなくマリネッティの思想とも決別し、機関誌『ブラスト(Blast)』を刊行、同誌にて「ヴォーティシスト宣言」を発表する。ロンドンの狂騒的な文化状況を指して「渦巻(The Vortex)」と形容したのはグループに共鳴した詩人のエズラ・パウンドだったが、公に流通する刊行物において「ヴォーティシスト(Vorticists)」の呼称が現われるのは、この宣言文が初めてだった。15年、宣言文に署名したF・エッチェル、H・G・ブルゼスカ、E・ワズワースら7人の画家・彫刻家に招待作家を加え、ドレ画廊にて「第1回ヴォーティシスト」展を開催。大戦の混乱もあり新聞・雑誌評は思わしくなく、パウンドの後押しによって17年にニューヨークでの展覧会が実現したものの、グループは当初の勢いを失って個々の方向性へと分裂した。14年からほぼ4年間のみの運動ではあったが、前世代の保守的傾向から離脱した革新性、同時代のヨーロッパ美術と比べてもひけをとらない抽象美術への反応など、再評価されるべき側面はけっして少なくない。

著者: 中島水緒

参考文献

  • 『現代の絵画20 現代のイギリス絵画』, , エンリコ・クリスポルティ(中原佑介、川名公平訳), , 平凡社
  • 『イギリス美術史』, , サイモン・ウイルソン(多田稔訳), 岩崎美術社, 2001
  • The Vorticists, , , Tate Publishing, 2010

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