2019年08月01日号
次回9月2日更新予定

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多文化主義

Multiculturalism

複数の文化間の相違を積極的なものと捉え、異なる文化の共存や共生を図っていくこと。文化間の相違を否定的に捉え、それを「普遍」の名のもとに包摂しようとする単一文化主義(monoculturalism)に対し、多文化主義(multiculturalism)はその乗り越えを目指す立場に相当する。

多文化主義は、エドワード・サイードによって一躍注目を浴びたオリエンタリズム批判や、ポストコロニアリズムといった思想と並行して20世紀後半に広まっていった。美術においては、世界各地の異なる作品の様式や傾向を単一的な視点のもとに捉えるのではなく、その複数性や異質性を積極的に紹介していこうとする態度がそれに相当する。とりわけ80年代には、「20世紀美術におけるプリミティヴィズム」(MoMA、1984-85)、「大地の魔術師たち」(ポンピドゥ・センター、1989)という2つの展覧会を嚆矢として、この傾向は広く浸透していく。しかし、これらは確かに非西洋圏の美術を紹介することで多文化主義的な視点を打ち出しはしたものの、ともすればこうした態度は非西洋の作品に見られる新奇さや真新しさのみを表面的に紹介することにもなりかねない。それが西洋による非西洋の搾取と見られるか、異文化との「政治的に正しい」共存と見られるかは、展示方法をはじめとするさまざまな配慮によって容易に変化しうるものであり、それゆえ美術における多文化主義はつねにこうした緊張関係のもとにある。

著者: 星野太

参考文献

  • 『マルチカルチュラリズム』, チャールズ・テイラーほか編(佐々木毅ほか訳), 岩波書店, 1996

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