2019年08月01日号
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実験音楽

Experimental Music

1950年代以降のJ・ケージとケージに影響を受けた、主としてアメリカの音楽家たちによる音楽芸術。最終的な音響結果を確定せずに作られ演奏される音楽。近現代の芸術では、「実験」と「前衛」はたいてい同じ意味で使われる。その場合、「実験的」とは、最先端の手法を試すがゆえにそう形容されるのだから、「前衛的」と同じ意味である。しかしこの点で音楽芸術は多少特殊である。音楽芸術でも先端的な作風を「実験的」と形容することはあるが、ケージの活動を考慮に入れるならば、「実験」と「前衛」は区別されねばならない。 そしてケージを無視できる先端的な音楽芸術はほとんどない。それゆえ「実験音楽」は、同時期のP・ブーレーズやK・シュトックハウゼンたちの(主としてヨーロッパの)「前衛音楽」と、理念的に対立するものとして規定されるのである(L・メイヤー、M・ナイマン、H・ベニテズなどがこの美学的区分を整理した)。ケージによれば、(ケージ的な)実験音楽の本質は「結果が予知できない行為」(『サイレンス』)にある。要するに、実験音楽とは最終的な音響結果を作曲家が予想できない音楽なのである。そのためにケージは、偶然性という作曲技法(《易の音楽》(1951))や環境音を利用する音楽作品(《4分33秒》(1952))を考案した。 最終的な音響結果は作曲家と関係ないからこそ、「音はそれ自身になる」(ケージ)わけである。「実験音楽」の最初のモノグラフ『実験音楽』(ナイマン、1974)を参照するならば、狭義の実験音楽は、ケージ以降、M・フェルドマンらニューヨーク楽派、フルクサスのアーティストたち、ミニマル・ミュージックの作曲家たちに継承され拡散していった。

著者: 中川克志

参考文献

  • 『サイレンス』, ジョン・ケージ(柿沼敏江訳), 水声社, 1996
  • 『現代音楽を読む エクリチュールを超えて』, ホアキン・M・ベニテズ, 朝日出版社, 1981
  • Music, The Arts, and Ideas: Patterns and Predictions in Twentieth-Century Culture, Leonard Meyer, The University of Chicago Press, 1994
  • 『実験音楽』, マイケル・ナイマン(椎名亮輔訳), 水声社, 1992
  • 『アメリカン・ニュー・ミュージック 実験音楽、ミニマル・ミュージックからジャズ・アヴァンギャルドまで』, エドワルド・ストリックランド(柿沼敏江、米田栄訳), 勁草書房, 1998

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