2019年12月01日号
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瞬時性と持続

Instantaneousness and Duration

美術批評家マイケル・フリードが論文「芸術と客体性」(1967)で提起した対概念であり、モダニズム美術とミニマル・アートを比較し、前者の優位を主張する文脈のなかで導入された。フリードの批判対象としてのミニマル・アートは、しばしば同じ構成単位が反復的に配置され、鑑賞者がそのあいだを動き回りながら経験する点で、見られることの持続性によって作品が成立する。このように作品の効果が鑑賞者の時間的な経験に依存する限りにおいて、ミニマル・アートは作品としての自律性を持ちえず、対してモダニズム美術は、独特の仕方でそうした持続する時間を克服しており、それを可能にするのが瞬時性である、とする。しばしば誤解されがちだが、ここでの瞬時性とは、作品が一瞬のうちに見られる性質、というような単純なものではない。フリードはアンソニー・カロの彫刻作品において、各々の部分が別の部分との相互作用のなかにありながら並列される点に、シンタクス(統語法)的な関係を見出す。諸要素の関係性のうちに作品が成立し、それによってさまざまな視点から鑑賞しうる。にもかかわらず、文章の意味作用が一瞬で明示されるかのように、作品が一瞬のうちに鑑賞者によって経験される、という逆説において瞬時性は提起される。こうした観点は、ソシュール言語学を通じて得られたことがフリード自身によって強調されているが、ロザリンド・クラウスは、同じくソシュールをふまえ複製の問題へと着目しながら、作品のもつ反復的な時間性を評価する、フリードとは真逆の議論を展開している。この意味で瞬時性/持続の一対は、モダニズムに対する批判的な文脈の起点になったと考えることもできる。

著者: 池田剛介

参考文献

  • 『オリジナリティと反復 ロザリンド・クラウス美術評論集』, , ロザリンド・E・クラウス(小西信之訳), リブロポート, 1994
  • 『批評空間臨時増刊号 モダニズムのハード・コア』, 「芸術と客体性」, マイケル・フリード(川田都樹子、藤枝晃雄訳), 太田出版, 1995

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