2019年06月01日号
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絵画の死

The Death of Painting

19世紀初めに写真が発明されてから何度となく繰り返されてきた美術史上における絵画の衰退を言い表わす言葉。写真の発明後、理想ではなく目に見える現実を描こうとする写実主義のもと、古典絵画を解体したエドゥアール・マネや、人体や物を不動で無時間的なものと捉えてきた絵画に、運動や時間という観念を導入したマルセル・デュシャン。あるいは、絵画から再現性を排除し、色と線の純粋な構成による抽象画を生み出したピエト・モンドリアンや、画面からイメージを追放して表現行為を極めたジャクソン・ポロック、そしてミニマリズムからコンセプチュアル・アートに至る流れなど、それまでの絵画の枠組みからの逸脱が起こり、その存在意義が問い返されるたびに絵画の終焉が語られてきた。だが、「絵画の死」の反動として「絵画への回帰」が起こるため、それで絵画がなくなることはなかった。例えば、伝統的な主題を具象的に描く1970-80年代の新表現主義は、ミニマリズムやコンセプチュアル・アートの禁欲的な表現に疲弊していた美術界に歓迎された。しかし、その懐古的な表現が絵画における新たなオリジナルの追求を断念させ、既存のイメージや様式を引用し、組み合わせて再提示するシミュレーショニズムへと一気に向かわせたことからもわかるように、安易な「絵画への回帰」はアートシーンを停滞させる危険性をはらんでいる。

著者: 田中由紀子

参考文献

  • 『デュシャンは語る』, マルセル・デュシャン、ピエール・カバンヌ(岩佐鉄男、小林康夫訳), ちくま学芸文庫, 1999
  • 『20世紀絵画 モダニズム美術史を問い直す』, 宮下誠, 光文社新書, 2005

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