2019年08月01日号
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表現主義論争

Expressionismus-Diskussion(独)

1937年から38年にかけて、モスクワで発行されていた亡命知識人たちの文化誌『ダス・ヴォルト』を中心として起こった論争。ナチス・ドイツに対する国際的なファシズム闘争のさなかに、ヨーロッパとロシアの各地で亡命生活を送る多数のドイツの文学者・芸術家を巻き込む論争に発展した。この論争は、表現主義文学の代表的詩人ゴットフリート・ベンが公然とヒトラー・ファシズムを支持するに至り、ベンを批判するクラウス・マンらによる文章が『ダス・ヴォルト』に掲載されたことを発端とする。その後、表現主義を擁護する論陣と、表現主義にはらまれていた政治性がファシズムを準備したとして批判する論陣とに分裂し、熾烈な論争が展開された。この論争に参加した主要人物にはエルンスト・ブロッホやジョルジ・ルカーチらがいる。民衆的リアリズムの立場から、表現主義の無媒介的な直接性と形式主義を批判したルカーチに対し、ブロッホは、F・マルクやA・マッケらの「青騎士」では、土俗的・民衆的な文化の再発見が行なわれ、民衆性が前衛芸術との接触において回復されたのだとする文脈から表現主義を擁護した。結局この論争は、反ファシズム闘争を内部から二分しかねないことを憂慮した同誌の編集委員で劇作家のB・ブレヒトが論争に関わる文章の掲載の打ち切りを決定したことにより終着を迎えた。

著者: 沢山遼

参考文献

  • 『表現主義論争とユートピア』, , 船戸満之, 情況出版, 2002
  • 『表現主義論争』, , 池田浩士編訳, れんが書房新社, 1988

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