2019年08月01日号
次回9月2日更新予定

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貸画廊

Gallery for Rent

おおむね1960年代以後に定着した日本独特の画廊の形態。展覧会のための展示空間を美術家に貸し出し、その賃料によって運営する画廊を指す。グループ展として使われることもなくはないが、ほとんどの場合は個展の会場として利用される。発表の機会を望む美術家にとって自由な自己表現が可能となる反面、経済的負担はけっして小さくない。ほとんどの大都市に点在しているが、東京の銀座・京橋界隈が貸画廊の街としてつとに知られている。作品の売買を主とする企画画廊(コマーシャル・ギャラリー)と対置されることが多い。貸画廊が定着した背景には、美術家たちの関心が団体展から個展へ移行したことがある。序列制度に貫かれた団体展は、個人として自立しようとする美術家にとって必ずしもふさわしい制度ではなく、針生一郎、東野芳明、中原佑介のいわゆる「御三家」に代表される戦後世代の美術評論家も個展への挑戦を盛んに唱えていた。その受け皿として、たとえば村松画廊(1942-2009)、タケミヤ画廊(1951-57)、サトウ画廊(1955-81)、内科画廊(1963-67)、ルナミ画廊(1963-98)、秋山画廊(1963-)、ときわ画廊(1964-98)、田村画廊(1969-2000)などが大きな役割を果たした。とはいえ、貸画廊といえども、時として美術評論家や学芸員を顧問や相談役として迎えたり、もしくは自ら自主的にグループ展を企画することもある。美術家から賃料を徴収する貸画廊が、キャリアに乏しい美術家にとって大きな足かせとなっている問題はかねてから指摘されてきた。ただその一方で、専門家や愛好家に鑑賞される機会がある程度確保されること、そしてそれを足がかりにその後大きく成長する美術家が少なくないことも否定できない事実だ。貸画廊が戦後日本の「現代美術」の歴史と同伴していることはまちがいない。

著者: 福住廉

参考文献

  • 『芸術新潮』, 「現代美術市場開拓史」, 新潮社, 1988年2月

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