2019年06月01日号
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音響生態学

Acoustic Ecology

サウンドスケープ概念の考案者、R・M・シェーファーが提唱した研究領域。音環境、つまりサウンドスケープがそのなかで生きる生物に与える影響を対象とする。シェーファーが挙げたこの研究領域の主な内容は以下のとおりである。サウンドスケープの記述、分類。音が人間の健康に与える影響の調査。音の象徴性など、サウンドスケープの文化的意義の調査。なかでも共同体にとって意義ある音(サウンド・マーク)の保存。シェーファーが健康への影響を強調する背景には、1960年代に始まる公害問題とエコロジー運動がある。これらの調査は彼が「サウンドスケープ・デザイン」と呼ぶ、意味深い聴覚文化を回復するための実践につながっていく。音響生態学研究のためにシェーファーが中心となり、71年にカナダのサイモン・フレーザー大学で組織されたのが「ワールド・サウンドスケープ・プロジェクト(WSP)」である。その最初の調査結果は『バンクーバー・サウンドスケープ』(1973)にまとめられた。そして93年には「音響生態学ワールド・フォーラム(WFAE)」が設立されている。騒音を出す機械や、音と音源を切り離す電気メディアに対するシェーファーの否定的見解には、音を扱う作家から疑問の声が挙がることもある。とはいえ、音の文化的意義の調査や、生態学との結合といった彼の着想はいわゆるサウンド・アートの現在に至る展開に計り知れない影響を与えたことは疑いえない。

著者: 金子智太郎

参考文献

  • 『世界の調律 サウンドスケープとはなにか』, R・マリー・シェーファー(鳥越けい子ほか訳), 平凡社, 1986
  • The Handbook of Acoustic Ecology, Barry Truax ed., A. R. C. Publications, 1978
  • Acoustic Communication, Barry Truax, Ablex Pub. Corp., 1984
  • 『サウンドスケープ その思想と実践』, 鳥越けい子, 鹿島出版会, 1997
  • 『音の生態学 音と人間のかかわり』, 岩宮眞一郎, コロナ社, 2000

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