今日はYCAMの業務とは直接関係のない、プライベートなことを書いてみようと思います。
僕はこの4月から、友人とともに一軒家をシェアして住んでいます。一つの場所をシェアして暮らすのは初めてではないのですが、同居人の服部君は料理上手なとても素敵な人物で、楽しい日々を過ごしています。服部君というのは秋吉台国際芸術村の学芸スタッフで、アーティストの友人も多く、自然発生的に面白いイベントが発生する場所として、住居である一軒家が活動拠点になった、というのが成り立ちです。山口市前町という住所にちなんで、「Maemachi Art Center :通称 MAC」と呼んでいます。
アートセンターといっても、初めは「ごっこ」遊びのようなもので、YCAMや、秋吉台国際芸術村にやって来たアーティストを呼んで来て、プライベートなプレゼンテーションをしてもらったり、パーティ会場として使ってもらったりしていました。徐々にその活動も拡張をしてきて、滞在制作の拠点になったり、ライブラリー(図書室)を公開したり、作家の作品を上映会したりして、スタート当初から定まっていなかった活動の方向性はますます混迷を極めています。
今年の夏は、MACの主催事業として写真家・アーティストの下道基行くんを中心として、Re-Fortというプロジェクトを行います。Fortというのは砲台のことで、山口の下関と北九州の門司に存在する戦争遺構としての砲台で、その場所を砲台以外の使い方をすることによって、僕たち自身が戦争について何かを考えるためのイベントです。
僕自身の記憶をひもといてみると、平和教育とか、反戦運動といったものに対して、なぜか真剣に取り組めなかった思い出があります。戦争経験の無い(=当事者ではない)僕に、なにかを語ることが許されないような気がしていたのと同時に、語る資格が剥奪されているがゆえの責任放棄ができてしまう、心理的な構造があったのかも知れません。それでもきっと真剣に考えないといけないことなのだろう、という思いは抱えていて、具体的にどうすれば良いのか分からずもやもやしていたように思います。
ところで、下道くんというのは『戦争のかたち』(リトルモア)という書籍を出していて、日本中の戦争遺構を撮影しています。等身大の感覚として、実際に触れられる戦争遺構へ赴き、その場所に行って経験すること、想像することを通して戦争について考えたり語ったりすることに、僕は素直に共感できました。
下道くん以外にも、2007年に「三月の5日間」をYCAMで上演したチェルフィッチュの岡田利規さん、2008年度YCAM長期ワークショップ"meet the artist"でお世話になったPort Bの高山明さん、今年の夏にYCAMにて滞在制作が予定されている、マレビトの会の松田正隆さんや笹岡啓子さんなど、僕の身の回りに関わりのあるアーティストだけで考えても、それぞれアプローチや方法論などは違うけれども、「いまここで考える戦争」に取り組んでいる(ように、僕には見える)アーティストとお会いする機会が多く、今回のプロジェクトも必然なのかなと感じたりします。
こういう活動は巡り巡って仕事ともリンクして来たり、メリットをもたらすこともあるとは思うのですが、基本的には直接関係ないわけです。それでも、プライベートな時間やお金をたくさん使って、わざわざこんなことをしているなんて自分でも時々アホみたいだなあ、って思うこともあるのですが、結局はそこで起きること、出来上がるものが面白い、って思っちゃうのですから仕方ないですね。
取材に(?)いきますよ! もうチケット取りましたからね。
前夜はビール呑み砲台。期待してます。
artscapeから、取材!ということで、スタッフも楽しみにしています。その他、新聞などからも取材依頼が来ていて、いよいよ本格的になってきました。
※ イベントはおかげさまで満員御礼となりました。前夜の合宿申し込みは締め切りました。