バックステージツアー

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2009年8月16日と、23日に、バックステージツアーが実施されました。

バックステージツアーというのは、劇場の裏側を見て回るツアーで、劇場などではさいきん頻繁に行われているようです。YCAMでも、8月28日、29日、30日に本番を迎えた滞在制作新作演劇公演「PARK CITY」(作/演出:松田正隆、写真:笹岡啓子)の関連企画としてバックステージツアーを実施しました。
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バックステージツアーでは、多くのお客さんが参加して、役者さんに演出を付けている稽古風景を見学したり、仕込みとよばれる準備風景を見学しました。稽古の風景では、たまたまある役者さんが小道具で打たれるシーンの練習で、見学に来ていた参加者もびっくり。小さな子どもから「なんであの人はずっと寝ていたの?」といった質問も飛び出したりしました。最後には演出家の松田さんと、作中に舞台上で投影される写真を撮影した写真家の笹岡啓子さんのお話も聞きました。


バックステージツアーと一言にいっても、その目的は様々あります。
1. チケットの販売促進
2. 劇場へ親しみを持ってもらう
3. 舞台作品鑑賞のポイントを増やす
などといった目的が挙げられると思います。

教育普及的な視点から言うと、どれも大事ではあるのですが、僕が個人的に興味を持っているのは、3の「舞台作品鑑賞のポイントを増やす」というものです。鑑賞ポイントが増えれば、作品を観に来る楽しみが増えます。同じ料金を払っていても、お得な感じがしますしね。

作品鑑賞のポイントと一言でいっても、たくさんあります。シナリオにまつわることや技術的なこと、もっと拡げると、舞台芸術の歴史を知っていれば見えてくるようなポイントもたくさんあります。映画等でも、その監督が好きな歴史上の映画等を引用していることはよくあります。それらの映画を観たことがあれば、「あっ、これは!」ってなるわけですね。

でもそういったマニアックな楽しみだけが舞台芸術の楽しみではないし、もう少し目に見えるもの、初めてでも見つけられるようなポイントを多くの人に伝えることによって、舞台芸術の楽しみを拡げていくことも可能かな、と思っています。そして、できれば特定の舞台だけでなく、あらゆる舞台芸術に共通するようなポイントを伝えることで、他ジャンルの作品へ(演劇好きだった人がダンスに興味が広がる、というようなこと)も興味が広がっていくと良いな、と思っています。

そんな視点から見てみると、技術的なポイントについて知ることも面白いのではないかと思います。演劇では台本というものがあるのですが、ダンス作品では必ずしも台本がないこともあります。でも、舞台は多くのスタッフが自分の役割とタイミングを持ち、それらが歯車のようにキチンと噛み合ってこそ、ひとつの統合された作品になっていくんです。タイミングを記した「キューシート」とよばれる進行表を各スタッフが持っていて、自分の果たすべき操作を書き込んでいき、それに従って舞台は進行していきます。時間を伴った舞台という芸術においては、順序というのは大変重要な意味を持つことは想像に難くありません。その時間の中で、様々なテクニカルスタッフがそれぞれの仕事を全うして、全部がひとつの芸術になっているんです。

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全体の安全を確保しながら吊りものなどを担当する舞台機構さん、サウンド担当は音響さん、照明さんは舞台空間のデザインと言ってもいいぐらい影響力あります。最近では映像も重要な要素のひとつであるので、YCAMには映像さんもいます。これら全てタイミングが合わさっていくことで、総合芸術である舞台作品が出来上がっているわけですね。当たり前すぎることですが僕はこのポイントがいつもすごいな、って思ってしまいます。

例えば、音響さんであれば音響に関する全てのことに責任を持ちます。スピーカーの配置などによって、効果を変化させることもできますし、聞こえない音で空気を作ることもあるそうです。観客には実感としては認識されない程度の、すごく小さな音で蝉の声や波の音を流して、雰囲気を作ったりということです。

こういった細かな効果を全て組み合わせてひとつの芸術が出来ているんですね。

バックステージツアーでは、全ての技術を詳細に伝えることはできませんし、技術的なポイント以外にもたくさん伝えたいことがあるのですが、こういったポイントの提示をしていくことによって、観客の目線が「高解像度」になっていくことで、楽しみを増やしていくことが出来るんじゃないかなと考えています。

漫然と受動的に観ているだけではなく、観客の目線が、どんどん能動的に、細かなところまで見逃さずに作品を見ていくことで、あらゆる作品の鑑賞の楽しみが増えていく。教育普及として、そのお手伝いを出来ればいいなと思います。

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ブロガー

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