フランス南西部の港湾都市ボルドーで生まれたマルケは、パリで盟友アンリ・マティスと出会い、仲間たちとともに純粋色と自由な筆触を用いた「フォーヴィスム(野獣派)」と呼ばれる作風を展開していきます。しかし、終始、観察に基づいて描く態度を崩すことはなく、「マルケのグリ(灰色)」と呼ばれた独特な灰色の使い方をはじめ、ニュアンスに富んだ中間色のトーンの対比によって、風景画を描くようになります。
 彼はパリの自宅から眺めたセーヌ、南仏やアルジェなど旅先で出会った水辺の情景を愛し、時間や天候を変えて同じ場所を繰り返し描きました。高所から俯瞰する角度で水辺と建物が織りなす風景を見つめ、それらを単純化した色面で構成し、風景の本質的な構造を浮き彫りにしたのです。また、人々や車、船といった都市生活のモティーフを軽やかに描き、そのわずかな筆致で真髄を捉える描写力には、日本美術の影響も指摘され、マティスから「我らの北斎」と称えられました。
 本展は、日本におけるマルケの35年ぶりの回顧展です。初期から晩年に至る画風の変遷をたどるとともに、水辺の情景などいくつかの重要なモティーフやテーマに焦点を当てます。さらには晩年のポン=ヌフ連作の特異な魅力を浮き彫りにします。作家ゆかりの重要なパブリックコレクション、日本の主要美術館、日仏の個人所蔵家から厳選された作品約90点が一堂に会します。
会期中、素描類の展示替えを行います。前期:11月1日(日)まで、後期:11月3日(火・祝)から