──諭吉を通して熊楠を描き出す、熊楠を通して諭吉を描き直す──
 「日本人の可能性の極限」とも呼ばれた南方熊楠(1867−1941)と、近代日本を代表する思想家・教育者である福澤諭吉(1835−1901)の両者は、直接の接点はほぼありませんでした。しかし熊楠は、在野を貫き、無位無冠の人として生きた諭吉を意識していたことが知られています。また諭吉や慶應義塾の和歌山人脈は、熊楠に影響を与えた周囲の人々と幅広く豊かに重なりあっています。
 本展では、それぞれに興味深く膨大な研究蓄積のあるこの二人の智の探求に対する姿勢、人間観や自然観、アジア情勢や国家との間合い、さらにはその個性的なキャラクターなどを比較することで、二人の重なりや違い、目指していたことを改めて描き直すことを試みます。