身近にあるものを色とりどりの糸で繭のようにぐるぐる巻きにしてしまったオブジェ。もしこれだけ見せられても心は動かされないだろうが、ひとたび作者が制作する様子を記録したビデオを見れば、きっといとおしく感じるに違いない。作者のジュディス・スコットはダウン症で、はっきりいって容姿も挙動もインパクトがある。とすれば、われわれはこの作品そのものにではなく、彼女がこれをつくる行動のなかにいいしれぬ魅力を見出すわけだ。それがこの作品をインサイダーアートともほかのアウトサイダーアートとも分け隔てる特異性なのだ。
[6月27日(水) 村田真]