2018年04月15日号
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ミュジック・コンクレート

Musique Concrète(仏), Concrete Music(英)

「具体音楽」とも訳されるミュジック・コンクレートは、録音された音を用いて制作した音楽を指し、ラジオ局の技師だったP・シェフェールがフランスで1940年代に始めたものである。楽音ではなく、人や動物の声、自然の音や都市の騒音などを録音し、電気的・機械的に変質させ、組み合わせて制作された。44年にシェフェールはラジオ局の片隅に実験スタジオを作り、初めはレコードを用いて音楽制作を開始し、48年には初めてラジオで放送された。シェフェールの活動にP・アンリが合流した後の51年には、パリにミュジック・コンクレート研究グループ(GRMC)が設立され、多くの作品が制作されることになった。シェフェールによれば、ミュジック・コンクレートという名称は具体的(Concrète、Concrete)な音を使うからではなく、伝統的で「抽象的な」音楽と対比させるためにつけられた名称だった。「抽象的な音楽」は抽象的な理念や構想から具体的な音楽作品へと向かうものであるのに対し、「具体的な音楽」は、具体的な音響から抽象的な理念や構想の表現へと向かうもの、とシェフェールは考えたのだ。60年代以降のシェフェールは実作から遠ざかり、具体音楽に関する理論的考察に集中し、例えば、音源が見えない状態での音響聴取(「アクースマティック」な聴取)の体系的な考察などを行なったが、晩年には具体音楽に関わった自らの人生を「無駄だった」と総括する痛ましいインタヴューを残すことになった。このインタヴューは、それまで存在していなかったまったく新しい音楽ジャンルを開拓した人物の言葉としては残念なものでしかないが、とはいえもちろん、創始者が後にその可能性を断念したからといって、録音された音を用いる音楽の可能性を開拓した最初の事例としてのミュジック・コンクレートの重要性がなくなるなるわけではない。

著者: 中川克志

参考文献

  • Electric Sound: The Past and Promise of Electronic Music, Joel Chadabe, Prentice Hall, 1997
  • Electronic and Experimental Music. 2nd editioin, Thomas B. Holmes, Routledge, 2002
  • 『日本の電子音楽』, 川崎弘二(大谷能生協力), 愛育社, 2006
  • 『ユリイカ』1998年3月号、特集=解体する「音楽」, 「インタヴュー ドレミの外では何もできない(聞き手:ティム・ホジキンスン)」, ピエール・シェフェール(小林善美訳)
  • 『電子音楽in JAPAN』, 田中雄二, アスペクト出版社, 2001

参考作品

  • 《ひとりの男のための交響曲》, ピエール・シェフェール、ピエール・アンリ, 1950

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