2018年07月15日号
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魔術的リアリズム

Magic Realism(英), Magischer Realismus(独)

マジック・リアリズム、マギッシャー・リアリスムスとも言う。特定の潮流を指す名称ではなく、時代、地域、ジャンルを超えてさまざまな文脈で適用されてきた。文学の領域では現代イスパノアメリカ文学の一傾向を表わすが、美術においてはワイマール共和国時代のドイツにその発祥を見出すことができる。すなわち、1920年代の初頭、第一次世界大戦後の社会不安のなか、反表現主義的な立場から生まれた新しいリアリズムの潮流である。即物的、客観的な態度で対象の再現にのぞむ具象表現という観点から、G・F・ハルトラウプが提唱した新即物主義(ノイエ・ザッハリヒカイト)と混同して語られるか、もしくはその一部とみなされることが多い。ハルトラウプが「新即物主義―表現主義以後のドイツ絵画」展をマンハイム美術館で開催した25年、美術史家・写真家のF・ローは『表現主義以後』と題された著書を刊行し、ここに初めて魔術的リアリズムの名称が登場する。同書でローは、表現主義と表現主義以降の美術を「エクスタシー的対象/醒めた対象」「客体抑圧的/客体の明確化」「動力的/静力学的」などの二項対立で図式化し、さらにその後、表現主義以後の動向の代表格として、M・ベックマン、O・ディクス、A・カノルト、A・レーダーシャイト、G・シュリンプフらのほか、イタリア、フランスやスペインの画家の名前をリストに挙げた。卑近な対象を冷たく無機質な描写で描き、事物の背後にひそむ謎めいた感覚を引き出すのが魔術的リアリズムの典型的なスタイルと言える。こうした作風は、ジョルジョ・デ・キリコの絵画がドイツの画家たちに与えた影響を物語るものである。魔術的リアリズムは、その後オランダやアメリカ、スペインにも第二世代にあたる潮流を生み出した。また、50年代後半あたりから活動を開始した現代スペインの写実画家アントニオ・ロペス・ガルシアとその周辺に集う画家たちも、徹底した観察眼で対象に迫りながらどこか超現実的な雰囲気を醸し出す作風から、「魔術的リアリズム」あるいは「マドリード・リアリズム」と称されるときがある。

著者: 中島水緒

参考文献

  • 『魔術的リアリズム メランコリーの芸術』, 種村季弘, ちくま学芸文庫, 2010

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