
上映:2026/05/01~
会場:Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、アップリンク吉祥寺ほか全国公開
公式サイト:https://mimosafilms.com/drunkennoodles/
数年前より世界各国が多様性を尊重する社会へと徐々に変わっていくなか、セクシャルマイノリティであるLGBTQ+を巡る認識も変化してきている。そうした風潮において、近年、再注目を集めているのがクィアアートだ。これはLGBTQ+のアーティストによるセクシャリティをテーマにした作品を指すことが多く、従来のジェンダー規範に疑問を投げかけるアートジャンルをいう。『ドランクヌードル』は新進気鋭の映画監督であるルシオ・カストロが、サル・サランドラというアーティストに出会ったことから生まれた作品だ。サランドラは元美容師で、1980年代から趣味として刺繍を始め、次第に自身のセクシャリティを背景に同性愛をモチーフにしたエロティックな刺繍作品を展開。現在、アウトサイダーアート界で広く知られる存在だという。当初、監督はサランドラのドキュメンタリー映画を構想したそうだが、思うように「核心」をつかめず、フィクションでしか探れないことがあると気づいて方向転換をしたと語っている。
その端緒が、本作を非常にユニークな内容にしたと感じる。もしドキュメンタリー映画だった場合、必然的に作家側の視点や周辺に焦点を当てた作品となる。しかし本作は作品の受け手側に視点を置いているのだ。物語の主人公は美大生の青年である。彼は夏の間、ニューヨーク州ブルックリンにある叔父の家に留守番と猫の世話のため住まうことになった。同時にギャラリーでインターンを始めるのだが、そこで展示されていたのがサランドラの作品という設定である。実は、彼は昨年夏に州北部の森でサランドラと偶然出会ったことがあった……。

[© 2025 Lucio Castro Inc.]

[© 2025 Lucio Castro Inc.]
現在と過去、そしてブルックリンと州北部の森を行き来しつつ、時折、現実と幻想の境も曖昧になりながら、詩的な映像とともに、主人公がサランドラの作品に初めて触れた時の感動を丁寧にすくい取っていく。また、彼がゲイクルージングで出会った男たちやサランドラ、かつてのパートナーらと性交渉を重ねる様子も頻繁かつカジュアルに描かれ、そうした関係性や性の実態を想起させる。物語ではあくまで彼の心の動きに焦点が当たっており、サランドラの作品はサブ要素でしかない。しかし実際にアート作品とはそういうものではないか。受け手の心に衝撃や感動を与えた瞬間は大きく響いたとしても、その後はただひっそりと人生に寄り添っていくものではないかと思うのである。

[© 2025 Lucio Castro Inc.]
[© 2025 Lucio Castro Inc.]
『ドランクヌードル』
2025年製作//アメリカ・アルゼンチン/82分/カラー/1.37/5.1ch/英語・スペイン語/
原題:Drunken Noodles
脚本・編集:ルシオ・カストロ
出演:レイス・カリフェ、ジョエル・アイザック、エズリエル・コーネル、マシュー・リッシュ
字幕:大西公子 配給:ミモザフィルムズ
鑑賞日:2026/04/29(水)