会期:2026/06/23~2026/10/04
会場:アーティゾン美術館[東京都]
公式サイト:https://www.artizon.museum/exhibition_sp/sottsass2026/
20世紀イタリアデザインの巨匠といわれるエットレ・ソットサスが、デザイナー集団「メンフィス」を結成してからもう40年以上が経つ。にもかかわらず、ポストモダンと評されたメンフィスが世界に与えた影響力は未だ計り知れず、これを超える思想性の高いデザイナーや集団は、その後も現われていない。むしろ、時代は再びモダンデザインという守りへ向かっているような気がしてならないのである。そうした意味で、本展はいまの世の中に対しても強烈なメッセージを残し得るに違いない。

「エットレ・ソットサス」展示風景 ©Yuya Furukawa
本展は日本初のソットサスの大規模回顧展であるとともに、アーティゾン美術館にとっては初のデザイン展として話題を集めている。同館を運営する公益財団法人石橋財団は、近年、デザイン分野の作品収集に注力し、中でもソットサスの初期から晩年におよぶコレクションを100点以上抱えるに至ったという。幅広い分野の美術作品を所蔵する同館が、デザイン分野に目を向けた際、最も注目したのがソットサスの作品だったという点は興味深い。言い換えれば、美術の文脈でも十分に語れる作品だったということだろう。

「エットレ・ソットサス」展示風景 ©Yuya Furukawa

「エットレ・ソットサス」展示風景 ©Yuya Furukawa
ソットサスがデザイナーとして歩んできた時代は、そのまま戦後のイタリア史および世界史と重なる。戦前にトリノ工科大学で学位を取得後、第二次世界大戦従軍を経て、1950年代からプロダクトや家具のデザインに本格的に携わるようになるからだ。彼の初期代表作は、何といってもオリベッティ社の真っ赤なタイプライター「ヴァレンタイン」である。本展は回顧展ということもあり、このように初期から晩年に向かってソットサスの来歴や作品を紹介する内容となっていた。インドを旅して影響を受けた東洋美術や、病床で描いた「トーテム」シリーズのドローイング、また数々のメタファーを表現したモノクロ写真シリーズなど、メンフィス結成に至るまでの経緯が手に取るようにわかり、彼の思想や作品に対する理解が進んだ。ソットサスからすればモダンデザインを考えることは容易いが、ポストモダン──すなわち「デザインとは何か」を哲学的に問い続けることほど難しいものはなかったのだろう。もちろん、デザインの基本姿勢は人々の暮らしや社会をより良くすることだ。しかし、その概念があまりに凝り固まってはいやしないか。ソットサスが生涯をかけて挑んだ活動にこそ、我々の頭を柔軟に解きほぐすヒントが隠れているように思う。

「エットレ・ソットサス」展示風景 ©Yuya Furukawa
鑑賞日:2026/06/30(火)