
会期:2026/05/13~2026/05/25
会場:ニコンサロン(ニコンプラザ東京)[東京都]
公式サイト:https://nij.nikon.com/enjoy/exhibition/thegallery/events/2026/20260513_ns.html
新宿・ニコンサロンでタイラジュンの個展「Shell Mound」が開催された。本シリーズは沖縄の不発弾処理の過程で出現する「塚」を捉えたもので、2014年から2016年にかけて撮影された35点の写真からなる。
公開されている直近の情報では、2024年度に日本国内で実施された不発弾の処理件数は1,273件で、そのうちの427件が沖縄県に集中している★1。沖縄県では例年およそ400〜500件の撤去作業が行なわれ、すべての撤去が完了するのは70年後の2095年頃と見込まれている★2。
筆者の鑑賞日にはゲストを招いたトークが行なわれ★3、撮影時の状況が作家自身の言葉で語られた。沖縄では不発弾の処理とそれに伴う生活への影響が日常的な出来事で、処理の日程は新聞などで知らされたあと、数日置いて実施されるという。告知は当然ながら処理に関わる爆発の危険性を伝え、当該地から離れてもらうために行なわれるものであるため、それを聞いてわざわざ危ない場所に行く人はいない。現場は人数も少なく、タイラ自身も訪れてみるまで塚の存在を知らなかったという。実際の処理は自衛隊が行なうが、塚の形成はいくつかある業者のどこかが手がけるそうだ。
[筆者撮影]
展覧されている写真は、すべてが異なる場所で撮られており、塚のかたちもまたそれぞれ異なる姿をしている。不発弾のサイズや立地の影響を受け、開けた平地に山のように聳 えるものもあれば、墓の真隣を作業場に低く盛り上がるものもある。塚の基礎となる土は、茶色に枯れ草が混ざったものから、灰色のセメントのような砂、ごろごろとした石が混ざったもの、ブルーシートに覆われているものと多様で、それらがさらに黒やベージュの土嚢袋、グリーンネット、鉄の棒などの資材と組み合わさり、個々のスタイルを形成している。そうした考現学的な関心を引き起こす塚の様子に見入るほど、この塚の正体、なぜこのようなものが現われるに至ったかという史的背景がせり上がってくる。
タイラの写真の撮り方も多様である。塚との距離、角度、フレームのサイズに違いがあり、対象そのものよりも、塚が現われたという出来事を記録するかのようだ。カメラが引いて、塚以外の要素──ショベルカーや隣家の屋根、道路など──が写り込むほど、現場の記録写真といった趣が強まる。不動の被写体というよりも、撮影者が立ち会った作業過程といった時間的な状況が中判や大判のカメラで捉えられているのも印象的だ。
撮り方は違っても、いずれも塚の立つ空間全体を捉え、塚がどのような場所に現われたかを写している。塚は処理の前後に一時的に現われ、不発弾とともに姿を消す。地中に埋まって見えない戦争を伝える物体が、依り代のように視覚化されている。それらの一つひとつに目を向けさせるタイラの写真は、撮影が行なわれた10年前の沖縄の状況と、現在、これからも続く戦後の日本を照射している。
鑑賞日:2026/05/15(金)
★1──「令和6年度における自衛隊の災害派遣及び不発弾等処理実績について」(2025/07、11頁、URL=https://www.mod.go.jp/js/pdf/2025/p20250731_01.pdf)。
★2──「推定1850トンの不発弾が残る沖縄 全ての処理にあと70年 戦後80年間に爆発事故の死者は700人超、負傷は1200人超」(2025/06、沖縄タイムス、URL=https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1600413)
★3──登壇者はタイラジュン、長谷川新(インディペンデント・キュレーター)、町田恵美(エデュケーター)