会期:2026/04/03~2026/05/05
会場:ニュー椿[東京都]

よシまるシン(X / Instagram)はグラフィックデザインや映像分野で主に活動するクリエイターであるが、そんな彼がこの度の個展で掲げたのは「非鑑賞物を鑑賞する」というコンセプトだった。

平面作品で構成されたこの度の個展においてまず目に付いたのは、通常は作品外に掲示されるキャプションがすべて作品内に存在していたことである。端的なタイトルが付されたこれらの作品であるが、その異質性は習慣的に展示に通う観客であればあるほど感じることができるだろう。よシまるはあろうことか額縁をフレームのみにして、そこに空いた空間(壁面)の中心にキャプションを設置し、作品として成立させるという試みすらもひょうひょうとやってのけている(下図右)。

よシまるシン「非鑑賞物を鑑賞する??? — 標識・視力検査・あみだくじ —」会場風景[写真提供:よシまるシン]

つまり「非鑑賞物」とはこのように普段は鑑賞の対象になっていないものを指し、それを通じて「展示」という出来事を批評することが同展の目的であるのだが、実際にすでに売約された作品は、そのことを示すシールも作品内に貼り付けられており、作者の徹底が窺えるだろう。

こうした自己言及的なアプローチは、2024年の個展「宇宙の輪の中心のスペースサークルセンター」(亀戸アートセンター)でも行なわれていたことでもある。彼は作品鑑賞を行なう主体が、果たして本当に「見えているのか」という疑問から視力検査のマーク(ランドルト環)をモチーフに制作を行なっており、今回の個展でも引き続きランドルト環を随所に描き、鑑賞とは異なる「視」のモードへのスイッチングを促している。《caption》(2026、下図左)では額縁の一部をカットし作品内のマークを反復しており、作者のオブセッションはより強調されている。

よシまるシン「非鑑賞物を鑑賞する??? — 標識・視力検査・あみだくじ —」会場風景[写真提供:よシまるシン]

また、画面にはランダムにリサイクルマークが点在しているが、よシまるによるとこれは額縁のアクリル板に貼られていた保護シートを取らずにそのまま流用したことによって残っているものだ。これによって作品が完成したものなのか、いまだバックヤードにおいて保護された状態にあるのかの判別が難しくなり、鑑賞物としての作品はさらに揺さぶりがかけられる。

こうした作者の介入を直接避けるアイロニーは、スチレンボードの粘着面の剥離紙をそのままに展示するなど徹底されており、これらの手つきは掃除機などのプロダクトをまったく新品の状態のまま展示したジェフ・クーンズの「ザ・ニュー」シリーズも彷彿とさせるだろう。

後編へ)

鑑賞日:2026/04/12(日)