会期:2026/06/06~2026/07/17
会場:そごう美術館[神奈川]
公式サイト:https://sogo-museum.jp/exhibitions/details.jsp?id=1999


左:葉山有樹《龍孫皇帝図鉢》  右:葉山有樹《万花彩Ornament》

自らの技と感性を最大限に生かした超絶技巧を得意とする工芸作家は少なくないが、陶芸分野では葉山有樹(はやま・ゆうき)の右に出る者はいないのではないか。日本有数の磁器産地である佐賀県・有田町で生まれ育った葉山は、家庭の事情により15歳から窯元で働き始め、20代で独立。その一方で、独学で幅広い分野の知識を習得し、寝る間も惜しんで働き続け、国内外で高い評価を受ける陶芸家の地位を築いた。彼の並々ならぬ努力と苦労はすべて創作へと向けられたからこそ、あの息を飲むような細密描写が生まれたのではないかと思う。およそ10年前に彼のスタジオを訪れたことのある私は、いまも鮮明に思い出せるほど、その作品群のすごみに圧倒されたのを覚えている。そうした経緯もあり、本展を非常に楽しみにしていたのだが、会場では想像を遥かに超える世界観と陶芸技術の進化を目の当たりにした。

本展は3部から成り、第一部は「音の世界」、第二部は「東西文化の融合」、第三部Iが「自然との共生」、Ⅱが「四大文明」、Ⅲが「普遍の願い」と題されていた。陶磁器の原料となる鉱物は宇宙からもたらされたものという概念のもと、宇宙の中の地球の誕生から始まり、人類が築いてきた文明の歴史、そして未来に向けて望まれる自然との共生と、とても壮大なテーマの流れの中で作品が展開されていく。この神のような大局的な視点はさすがと言わざるを得ない。


葉山有樹《有為転変図》

第一部はインスタレーションとなっており、ドビュッシーの音楽が優しく流れる薄暗がりの中、夜の海を月がほんのり照らす様子が表現された大型壁面作品《月の光》と、青い地球と宇宙の波動(エネルギーの揺らぎ)が表現された大型地面作品《波動》から始まる。一見、どちらも陶板作品であるのだが、正確には陶板に絵付けしたあと、スキャンして16倍に拡大し、タイル状のアルミ製複合板パネルに写し取った「陶板版画」であるという。これは近年、葉山が協力会社と共に開発したまったく新しい表現方法で、「エディションワーク」と称されている。陶磁器より軽くて、耐候性があるため、特に屋外での大型作品に向くそうだ。この陶板版画による作品はさらに続き、従来の壺や盌(わん)の作品と共に独自の世界観を作り上げていた。これまで得意としてきた物語のある細密描写だけでなく、新しい陶芸のあり方を追い求めてきた葉山の真摯な姿勢に、ますます感服したのだった。


展示風景 葉山有樹《月の光》(奥)、《波動》(手前)[筆者撮影]

鑑賞日:2026/05/28(木)