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学芸員レポート
札幌/吉崎元章福島/木戸英行東京/増田玲|高松/毛利義嗣
「岡本光博展 -furubik-」/
「ムラタ有子展 -Recent works-」
高松/高松市歴史資料館 毛利義嗣
●ギャラリーアルテ「岡本光博展 -furubik-」
岡本光博展 -furubik-
 タイトルの「furubik」とは、こちらこちらを見てもらうといいのですが、芭蕉の「古池や〜」の句と「ルービックキューブ」を合わせた造語で、ピンクの水に飛び込む蛙をモチーフにした平面と立体の作品が展示されてます。加えて、弁当などに使うばらん(これ)とアクリルプレートを組み合わせた日本の「水田」状の作品も。
 岡本さんのサイトを見てもわかるように、彼はこれまで、異なる文化や習慣が交差する時のギャップを積極的に取り上げて製作してきました。プロジェクトのそれぞれは明確なコンセプトと平明な形態を与えられ、そこにしばしば、ユーモアやアイロニーやセクシャルなモチーフがかぶせられています。彼の作品について難解だと言われることはあまりないでしょうし、美しい仕上げのせいもあってむしろ明快にすぎる、とさえ思うこともあります。にもかかわらずですね、今回の展示はそれほどでもないのですが、時に無神経に近い乱暴さを彼の作品から感じることがあって、たとえば右翼の街宣車のミニカーとかドザえもんとか「赤ちゃんがのっています。」の水子Tシャツとか、明快なのに不気味な、何というか世界に切りつけるようなナイーブで黒い欲望が見える気がするのですね。悪い意味でなく。
 コンセプト重視のプロジェクトを続けているように見えますが、もしかしたらコンセプトは二義的なことなのかもしれない、とも思います。彼が住んでいる場所、日本であったりドイツであったりスペインであったり、それらを移動することによって感じる違和を違和そのものとして表わすことが重要であって、違和をどう説明づけるかは偶発的な作業にすぎない、というような。
 今回の展示にあたって岡本さんはしばらく丸亀に住んでいて、今後もう少し四国に滞在してあちこち回ってみたいとも言ってました。たぶん異邦人のようにして。住む場所によって異なる手つきで違和を提示してきた作家が、この場所で何を見つけてくるか、楽しみにしています。


●ガレリアミーシャ「ムラタ有子展 -Recent works-」
ムラタ有子展 -Recent works-
 ムラタ有子さんの四国では初めての個展です(来たのも初めて、とご本人)。彼女の絵は、PolarisのCDジャケットで見覚えがある人も多いんじゃないでしょうか。
 近年の作品は、風景と動物の組み合わせ、またはそのいずれか、というのがモチーフになっています。ほとんどの作品は実際の風景や動物を見て描いているのではなくて、雑誌や絵葉書の写真をもとにしていたり、あるいは自分がどこか旅行に出かけた場合でも、その時の写真を記録物ではなく素材として再構成しつつ描いています。だからでしょうか、風景はしばしば奥行きが不明で、というより三次元の空間としては表現されず、遠景と近景、空や植物や地面が互いに混ざったり反発しているような、視覚的なざらつきを持った空間になっています。
 そんな風景の中にいる動物はといえば、ウサギとかポニーとかリスとかラマなのですが、どこを見ているのか何を考えているのかさっぱりわからない奇妙なモノのように、そこにあります。これを見てカワイイという感想もあるだろうとは思うし、実際カワイク見えるものもありはしますが、同時に奇妙だったり不気味だったり不思議だったりする印象もまた強いのです。そして、それは例えばカワイクもコワクも見える子供を描いた絵などから受ける印象とは少し異なっていて、というのも動物の場合、感情や性質が両面性を持って隠されたり現れたりするというよりも、そもそも人間が推し量りきれるものではないという、実は当たり前なことが見えてくる、そんな感じを受けたわけです。
 カワイさもコワさも美しさも、動物や風景の側ではなくそれに接する人間の側に所属している。ムラタさんの絵は、そのモチーフが身近で親密であるからなおのこと、とりあえず名づけられたラベルを介して認識しているこの現実の世界を、少しの間リセットして、見たこともないもののように触れ直すためのメディウムのように感じられました。
会期と内容
●「岡本光博展 -furubik-」展
会期:2004年6月7日(月)〜29日(火) 水曜休廊
会場:ギャラリーアルテ
香川県丸亀市新町1−23(JR丸亀駅構内) tel.0877-21-5604

●「ムラタ有子展 -Recent works-」展
会期:2004年6月18日(金)〜7月11日(日)
会場:ガレリアミーシャ
高松市片原町1-10 tel.087-811-4611
[もうり よしつぐ]
札幌/吉崎元章福島/木戸英行東京/増田玲|高松/毛利義嗣
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