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プライバシーステートメント
展覧会レビュー
小吹隆文/福住廉
10/5〜10/6
ギュウとチュウ 篠原有司男と榎忠 展
10/2〜12/24 豊田市美術館[愛知]
ギュウとチュウ 篠原有司男と榎忠展
篠原有司男と榎忠の二人展。今年で75歳の篠原と63歳の榎、二人の大ベテランが繰り出す力と力、物量と物量の激突がひじょうに魅力的な展示空間を生み出している。ギュウは、高さ9.6メートル、面積300平方メートルの巨大な展示空間に、全長8メートル、高さ3メートルにも及ぶダンボール製のオートバイ彫刻を置き、それを取り囲む3つの壁面のすべてをギリシア神話をモチーフとしたド派手な壁画で埋め尽くした。何がなんだかよくわからないけれど、壁面の中の猛獣がこちらに飛び出してくるかのような迫力があるのは、まちがいない。一方、チュウは廃品として捨てられたフィルムカメラのパトローネを集積して圧縮した無数のブロック14トンあまりを山のように積み上げて戦艦のような形状に仕立て上げた作品や、同じく廃材とされた金属部品を旋盤にかけて磨き上げ、それらを幾度も積み上げた要塞都市のような作品などを展示。暗い展示室のなかで妖しく光る金属部品やパトローネの廃品は物質の存在感を放ちながらも、どこかで死を感じさせてやまない。ギュウが内側に抱える熱いエネルギーを遠心的に放射しているとすれば、チュウは静かな狂気を求心的に圧縮しようとしているかのようだ。近年まれに見る好企画、これを見逃しては損をする。
[10月5日(金) 福住廉]
「日本画滅亡論」展
9/18〜10/20 中京大学C・スクエア[愛知]
近年「日本画」への注目が高まるなか、その「滅亡」を謳った展覧会。三瀬夏之介や山本太郎といったゼロ世代の旗手をはじめ、会田誠や山口晃、内田あぐり、清河恵美、水谷勇夫、秋山祐徳太子、赤瀬川原平、篠原有司男、立石大河亜など、狭義の「日本画」にかかわらず、古今東西さまざまな絵描きによる作品が一挙に見せられていた。それらをひとつひとつ丁寧に見ていくと、画材の面でもモチーフの面でも、いったい何が「日本画」なのか、その定義がますます分からなくなり、ジャンルとしての「日本画」の無根拠性を暴くという企画者のねらいは見事に達成されていたようだ。にもかかわらず、「日本画」が滅亡するどころか、今も存続しているということは、作家のねらいや鑑賞者による受容とは別次元で、何をどのように描き出そうが、作品が「日本」に収斂されていく力がどこかで働いているように思えてならない。それを端的に言い表せば、「天皇制」ということになるが、「日本画」のみならず、あらゆる文化制度や社会制度を貫徹するこの独特の条件を、もっとも自覚的に、そしてもっとも明示的に表現していたのは、会田誠の《一日一善》だけだった。「日本画」を廃棄するにせよ、その存命を図るにせよ、この土地でまことの表現を成り立たせるには、たんに「日本」を記号として消費するのではなく、「天皇制」という根源的な条件を念頭に置かなければならない。
[10月5日(金) 福住廉]
三瀬夏之介 展──日本画復活論
9/18〜10/7 ギャラリー名芳洞blanc[愛知]
三瀬夏之介展 ─日本画復活論─
「日本画滅亡論」にも参加していた三瀬による「日本画復活論」。「滅亡」の絵と比べると、「復活」の絵のなんと生き生きと溌剌としていることか。従来のように日本の風景が描き出されているのに加えて、そこに現在も滞在しているというフィレンツェの街並みが組み込まれることで、「復活」にふさわしい祝祭的な空気感を醸し出している。これを目の当たりにすると、絵描きにとっては「滅亡」も「復活」もまったく無関係であり、ただ絵を描くという原初的な悦びを体現するのが絵描きであるということが、ひしひしと伝わってくる。
[10月5日(金) 福住廉]
サイクルとリサイクル
9/7〜11/4 愛知県美術館[愛知]
サイクルとリサイクル
再循環や還元、再利用、再生産などをキーワードにしながら企画された展覧会。大巻信嗣や城戸孝充、竹村京、渡辺英司ら国内外9名のアーティストを集めた。個々の作品はそれぞれ自立的に見せられていたにせよ、どういうわけか全体の印象はひじょうに散漫だった。それはおそらく、それらの作品を統括する全体の文脈形成力が薄弱だったことに由来しているように思われた。「サイクルとリサイクル」はどんなアートであろうと何かしらのかたちで該当するのだから、企画展のテーマとしては広大すぎるし、それを9人の作家だけでカバーするには、あまりにも荷が重い。
[10月5日(金) 福住廉]
天体と宇宙の美学
10/6〜11/18 滋賀県立近代美術館[滋賀]
天体と宇宙の美学
デューラーやドレの版画から植松奎二の最近作まで、星や宇宙をテーマにした155点が集合。秋の夜長ならぬ、秋の昼間に天体観測という趣向だ。版画が多く、絵画でも高島野十郎など渋いセレクトが目立つため、全体に地味な印象は拭えない。それでも、浜田知明や鴨居玲の珍しくロマンチックな作品があったり、柄澤斎や日和崎尊夫、斎藤修の作品がまとまって並んでいたり、1972〜73年に相次いで発表された黒崎彰、吉田穂高、菅井汲の12星座の連作が揃っていたり(担当学芸員曰く、アポロ11号の月面着陸に触発された可能性あり)と、マニア心を刺激するツボはしっかり押さえてあった。
[10月6日(土) 小吹隆文]
Index
9/21〜9/23
三俣元──光の午後
酒百宏一──銀座の賜物
都市との対話
ミオ写真奨励賞2007入賞作品展
9/24〜9/29
Yokohama Boogie Under the Influence
イリヤ・カバコフ『世界図鑑』絵本と原画
Monotype展
陳文令 展 メタモルフォーゼ
芸術テロとシャーマニズム
津田直作品集『漕』出版記念イベント「やがて、図は景となる」
10/2〜10/4
現代美術の皮膚
三瀬夏之介「君主論」
鎌田仁 展
佐藤有紀 展
10/5〜10/6
ギュウとチュウ 篠原有司男と榎忠 展
「日本画滅亡論」展
三瀬夏之介 展──日本画復活論
サイクルとリサイクル
天体と宇宙の美学
10/9〜10/21
BIWAKOビエンナーレ2007 ──風土 Genius Loci
山口典子 展 PEPPERMINT MOTHER
安齊重男の“私・写・録”1970-2006
森のなかで
クリストファー・バッファロー 展
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