2019年06月01日号
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『ニューメディアの言語』レフ・マノヴィッチ

The Language of New Media, Lev Manovich

2001年にメディア理論家のレフ・マノヴィッチによって上梓された書物で、文化のあらゆる局面でコンピュータ化が進んだ1990年代における「ニューメディア」の美学的な諸相が体系的に論じられ、ニューメディア研究の起爆剤となった。マノヴィッチの定義する「ニューメディア」とは、単なる「新しい媒体」であるというよりは、従来の諸メディアがコンピュータ化を経た段階を指す一種のメタ的な概念である。つまり、既存のメディア情報がデジタルデータとしてコンピュータで操作可能なものとなるときに、各種メディアは「ニューメディア」になるのである。こうした理解から、マノヴィッチはニューメディアの原理を、数字による表象、モジュール性、自動化、可変性、トランスコーディングの5点にまとめ、一般にニューメディア独自のものとされているいくつかの特性――マルチメディア、ランダムアクセス、インタラクティヴィティなど――が必ずしも新しいものではないと指摘する。その上で、本書は「ニューメディア」の体験をボトムアップ式にたどり、ヒューマン・コンピュータ・インターフェースなどのインターフェース、メニューからの選択や合成といったオペレーション、デジタル画像の外観という意味でのイリュージョン、データベースや航行可能な空間といったより高次のフォームを総覧する。最終章「映画とは何か?」では、CGをふんだんに用いたデジタル時代の映画がどのような性格のものなのかが論じられ、とりわけ「デジタル映画とは、多くの要素のひとつとしてライヴ・アクションのフッテージを用いる、アニメーションの特殊なケースである」という定義はよく知られるようになった。なお、マノヴィッチは、本書で論じるニューメディアの揺籃期である1990年代を、映画が誕生した1890年代、ないし古典的な映画話法が成立しつつあった1910年代と重ね合わせている。本書で取り上げられているデジタル創生期の具体例のいくつかはすでに古めかしくさえあるが、初期映画が今なお人々の興味を惹くのと同様、さまざまな可能性に満ちていたニューメディアの揺籃期の姿は依然として検討に値するものであるといえる。

著者: 堀潤之

参考文献

  • 『ニューメディアの言語』, レフ・マノヴィッチ(堀潤之訳), みすず書房, 近刊

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