2019年12月01日号
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『映像の発見 アヴァンギャルドとドキュメンタリー』松本俊夫

Eizo no Hakken: Avant-garde and Documentary, Toshio Matsumoto

映画監督/映像作家である松本俊夫の第一評論集であり、1963年に出版された。松本は教育映画・記録映画や企業のPR映画の制作からその活動を開始し、日本自転車振興会のPR映画である『銀輪』(1955)を実験工房のメンバーの協力を得ながら監督したことでも知られる。その後も劇映画、記録映画、実験映画、ヴィデオ・アートなど、領域を越境する制作活動を行なう一方、映画・映像をめぐる言説においても知られるようになる。特に本書に収められている「前衛記録映画論」(1959)は、戦後日本社会の転換期を背景として、映画の領域に影響を与えた。
50年代の芸術・文化では、復興期の現実をどのようにして把握するのかという「記録」の問題が重要視されていた。これは文化・芸術の領域だけでなく、戦後の政治運動とも関連するものでもある。そこでは、旧来の社会主義リアリズムを乗り超えた、新しいリアリズムの獲得が花田清輝によって追求されていた。松本も花田の言説を契機とし、同様の問題意識をもって、アヴァンギャルド(ここではシュルレアリスム)の方法を使った新しいリアリズムの獲得を記録映画の領域で試みた。「前衛記録映画論」で述べられたアヴァンギャルド・ドキュメンタリーの理論とは、アラン・レネの『ゲルニカ』(1949)をモチーフとしながら、外からの現実をそのまま映画に記述するのではなく、アヴァンギャルド(シュルレアリスム)の方法論によって、無意識に潜んでいる内なる現実を記述しようとするものであり、新しい映画の担い手たちに大きな影響力をもった。このような松本の評論活動は、戦争責任論とも絡み合いながら映画界に広く論争を引き起こし、50年代末から60年代にかけての「記録映画作家協会」の分裂と「映像芸術の会」の結成を経て、新しい世代による、60年代後半から70年代にかけての大きな映画運動のうねりに引き継がれていった。

著者: 阪本裕文

参考文献

  • 『映像の発見』, 松本俊夫, 清流出版, 2005

参考資料

  • 『松本俊夫実験映像集 DVD-BOX』, 松本俊夫, アップリンク, DVD, 2005

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