2019年06月15日号
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海市

The Mirage City

建築家の磯崎新により、1994年から96年にかけて中国の珠海市に計画された面積約4haの人工島計画。人工生命のアルゴリズムを利用した街路パターンの生成により、自然発生的な都市形成をシミュレーションした。磯崎自身が語るところによると、「『海市』には二重の含意がある。ひとつは文字通りの海上の都市。もうひとつは、蜃気楼。(…中略…)この二重の意味のいずれの結果が生まれるかは予測できない。海上に都市を計画するとき、現行の政治的、社会通念的な諸制度と断絶した別種の世界を組み立てることも想像上は可能なので、これをあらためてユートピアと呼ぶこともできるだろう」(『海市 もうひとつのユートピア』)。磯崎は、「単一の創作主体が組み立てる都市計画は構造的にツリーにならざるをえない=C・アレグザンダーが言うところの『自然の都市』にはならない」というパラドックスが、60年代あるいはそれ以降の都市計画の限界を決定づけたと度々語っており、不特定多数の参加を促すメディアを利用して都市をつくるという主体の転換を試みた。1997年にICCギャラリーで行なわれた展覧会「『海市』 もうひとつのユートピア」では、会期中に起こるさまざまな主体の介入を「海市」計画に反映させる催しを行なった。そのひとつであった、デジタル世代の建築家が中心となって来場者の案を取り入れデザインを変容させていく仕組み(「ヴィジターズ」)は、2010年の展覧会「CITY2.0 WEB世代の都市進化論」(hiromiyoshii roppongi)にて再演される。こうして、「海市」にまつわる一連の試みは、人々が都市計画に介入する範囲を物質的次元から仮想次元まで広げ、不特定多数の主体による都市計画のあり方を生み出した。

著者: 田口純子

参考文献

  • 『InterCommunication』No.21, 「Erewhonのひそみに倣う 海市──もうひとつのユートピアをめぐって」 , 磯崎新+浅田彰, NTT出版, 1997
  • 『海市 もうひとつのユートピア』, 磯崎新監修, NTT出版, 1998

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