このたびGASBON METABOLISMでは、ガラスアーティスト・Yuri Iwamotoによる個展「Living Tree」を開催いたします。Yuri Iwamotoは、デフォルメされた植物や果実、身体などをモチーフに、伸びやかで有機的な形状のガラス作品を制作しています。吹きガラスならではの柔らかな造形と鮮やかな色彩を特徴とし、素材が持つエネルギーや“意思”をとらえた作品は独特の存在感を宿しています。近年では、アートのみならずインテリアの領域からも注目を集めています。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科でガラスを専攻し、在学中にフィンランド・アアルト大学へ留学。卒業後は富山県に拠点を移し、富山ガラス造形研究所研究科を修了。現在も同地を拠点に制作活動を続けています。

一般にガラスは、硬く冷たく、静止した素材として認識されています。しかし実際には、約1300度の炉の中で揺れ、流れ、膨らみ、伸び、絶えず姿を変え続けます。その生き物のような振る舞いに生命のエネルギーを見出してきました。作家は成立させたい形と素材の力とのあいだでせめぎ合いながら制作を行います。そのやり取りは、ガラスとの対話というよりも、互いの力がぶつかり合う応酬に近いものです。

本展タイトル「Living Tree」は、地面から立ち上がり、成長し続ける生命のエネルギーを象徴しています。作家は、植物が持つ「生える力」や「伸びる力」に強く惹かれ、その生命の営みをかたちとして確かめようと制作を続けてきました。そしてその力は、植物だけでなく動物の身体にも共通して存在するものだと気づきます。本展では、植物と動物、自然物と身体の境界を横断しながら、生命の断片を思わせる作品群が空間に立ち上がります。

本展の構想には、会場であるGASBON METABOLISMの土地性も大きく影響しています。作家が初めて会場を訪れた際に目にした南アルプスの山々がそびえる風景や、かつて三脚工場として使われていた背景から得た「立つ」・「支える」・「生える」というイメージが、新作群の方向性を形づくりました。本展では、近年作家が主に手がけてきた小型作品から発展し、新たにトーテムポールのような大型作品群を展開します。身近なガラスという素材を用いながら、スケールを更新することで美術表現としての可能性に挑戦しています。それらは空間の中に佇みながら、周囲の光や風景を取り込み、刻々と表情を変えながら新たな風景を生み出します。


GASBON METABOLISMにおいて、ガラスアーティストによる個展の開催は本展が初めてとなります。まばゆい自然光が降り注ぐ展示空間で、Yuri Iwamotoの作品はあらたなきらめきを放ちます。本展が、生きること、育つこと、立ち上がることーその根源的な力を、ガラスという素材を通して見つめ直す機会となれば幸いです。


作家ステートメント

何もない場所から突然生えてくる新芽やきのこ、1日でぐんぐん育つたけのこ、
砂漠を侵略するように広がるサボテンの海。

植物が持つ生える力、伸びる力、混沌を飲み込みながら生きてゆくさまに強く惹かれます。

形は違えど動物の体も同じで、様々な機関が絡み合いながら育っていくことに気がつきました。

心臓があり 果実があり 
卵があり  種子がある 
茎があり 血管があり 
根と葉があり 手足がある 
言葉も聞く。ごはんも食べる。

生きる/のびゆく という命の営みを形で確かめてみたいと思いながら制作しました。

熱いガラスは、生き物のように動いています。そのエネルギーや“意思”を留めるように形にしています。

わたしはガラスで“体”を作っているのだと最近考えています。揺れ動く柔らかいガラスに宿っている生命力や意思を、果実という体や、花という体、あるいは水という体を作ることで表現しようと試みています。

野生の植物や不揃い野菜の、のびのびとした形に元気をもらう時のように、「ここに命がある」という喜びを歌っていくような作品をつくりたいと思っています。

— Yuri Iwamoto