「書」と聞いたとき、いったいどのようなイメージを持たれるでしょうか。多くの人は、小学校や中学校の国語科書写の授業において筆で文字を書いたその瞬間を思い浮かべるかもしれません。しかし、それはあくまでも書の一側面に過ぎず、実は書の表現はもっとバラエティに富んでいます。
一般に書は文字を素材とした(造形)芸術であると定義されますが、「文字を素材とした」という点で、いささか議論の余地があります。その代表的なジャンルのひとつに、前衛書が挙げられます。前衛書は、文字から派生して発展させたものがある一方で、文字を起点としていないものもあります。前者のみが書であり後者は書としないのかというとそうではないでしょう。どちらも書の範疇に入るべきものといえます。では、書とはどういう芸術なのでしょうか。
この命題については、今日に至るまで多くの人々によって様々な意見が述べられ、また議論されてきました。長野県北佐久郡片倉村(現 佐久市)出身の書家である比田井天来(1872-1939)、その息子で書家の比田井南谷(1912-1999)もそれぞれの掲げる理念をもとに多くの作品を世に生み出し、書道界に大きな影響を与えました。
本展覧会では、天来や南谷の作品、そして南谷と同時代に活躍した前衛美術家たちの作品を通して、「書」の本質について再考します。