齊藤彩の絵画には、人類が造形を獲得してきた歴史が、作者の内部でもう一度巡っていくような不思議さがある。しかしそれは特定の様式や引用には還元できない未知のイメージだ。そこには、人間や植物、身体や器官、既知の形とまだ名前のない形が邂逅し、未分化の状態から新たな形態が生まれ続けている。題名を持たない作品群は、連鎖的に生成し続ける一つの世界の営みである。言葉では説明し尽くせない、絵画の誕生に立ち会うような感覚へと誘う。

齊藤彩の作品は、丈135cmほどのロールケント紙を一枚ずつ切り出し、主に油彩で描かれる。しばしば掌や指を使い、ときにはアクリルやクレヨンなど、さまざまな画材も併用する。一見、大胆で激しい風体をもつ作品だが、その細部は細やかな筆致で満たされている。言葉が生まれる以前の「野生の絵画」を日々生み出す画家の近作から、選りすぐりの40点を発表する。