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愛知  一藤木葵
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exhibition奈良美智スライドショー

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奈良美智
奈良美智

 
この1月から愛知県美術館で「セザンヌ展」が開かれる。もちろん多大な観客動員数を記録し話題なることは間違いない。だが、この冬の名古屋のアートを巡る、それ以上のトピックは二つの奈良美智展と言っていいだろう。
 今やもう説明の必要がないほどまで、知られる存在になった奈良。日本だけでなく、世界からも注目を集めるこのアーティストが、学生時代を過ごしたのが、名古屋だということをご存じだろうか。彼は現在、ドイツのケルンにアトリエを構えているが、86年の留学前は愛知県立芸術大学に在籍していたのだ。
 現代美術の世界ではよく知られた存在だった彼だが、吉本ばななの著書の装丁で一躍一般の人々にも知られるようになった。現在では、彼の描く頭でっかちで鋭い目つきをした子供たちに、あちこちでお目にかかる。
 パルコギャラリーの展覧会は、そんな彼の初の大型回顧展といえる。初期作品から、99年に制作されたものまで、奈良自身によってセレクトされた30点の作品で、彼のこれまでの創作活動を振り返った。まさに学生時代から多くの時間を過ごした土地で開かれた、彼にとって意味のある展覧会となったようだ。
スライドショー会場風景
スライドショー会場風景

「THE STAR CLUB」のヴォーカル、 ヒカゲ氏と
「THE STAR CLUB」のヴォーカル、
ヒカゲ氏と
 さてその展覧会では、彼自身がスライドを使って自身の作品を振り返り解説するスライドショーも開かれた。
 12月12日、完全応募制、抽選に当選した奈良ファンがひしめく中、彼のトークが始まった。ちなみに集まったファンのほとんどが20代前半の女性。彼がステージに立つまで、そこに現れるのは滝沢クンじゃないかと思うくらいの雰囲気だった。主催者によると、応募は全国津々浦々からあったという。
 どことなく照れたような奈良のトーク。彼の人柄と20代と言っても通用するような、ある意味可愛らしいルックス。そしてもちろん作品。そのあたりが、こうしたファン層を魅了する要因なのだろう。
 彼は話を始めるなり、照れ隠しか、すぐに会場を暗くしスライド上映を始めた。まずロサンゼルスのUCLAで授業を担当していたときに、自分が撮った風景写真を解説。その後、これまでの展覧会の会場風景の写真を使い、過去の作品を一つずつ解説していく。初期の作品では「恥ずかしい」を連発。かなり初期から、バンソウコウやナイフといったモチーフが登場しているのが興味深い。その中で、「THE STAR CLUB」というパンクバンドの音楽を聴きながら、作品を描くという話を披露する。
「彼らの曲を聴いていると、自分のテーマ曲のような気がして、いくらでも絵が描け
る」。
 会場が明るくなると、今度はその「THE STAR CLUB」のヴォーカル、ヒカゲ氏が登場、対談が始まった。といっても、始めは奈良が一方的にファンとしての思いを語るという展開。出会いから今の思いまで。「19歳の時に彼らの音楽に出会い、同じ年齢で、一緒に歳をとってきた気がする」。そして最新のCDではジャケットのデザインを奈良が担当したが、そのいきさつまで。
 前半、奈良が自分の初期の作品に対して恥ずかしいと語っていたが、ヒカゲ氏も、昔の曲は恥ずかしいと答える。
 「昔の曲を聴いていると19歳、20歳の頃に戻れる。そうやって絵を描いているのかもしれない」と奈良。「若い頃は無駄なことをたくさんやってきた。でも今は短い時間で、いいものが作れる。無駄なものがない。年をとっていやだと思うことは体力が落ちたことぐらい。プラスマイナスすると、今はプラスの方が大きい」という奈良の発言に、ヒカゲ氏もうなずき、対談は終わった。
 終わりには抽選会が開かれ、奈良のサイン入りのTシャツ、ポスター、はてはドローイングまでが、参加者にプレゼントされた。
 ところで、名古屋市内の画廊、白土舎でも彼の最新作を集めた展覧会が同時開催されたが、こちらの作品も即刻売れ切れ、大盛況だった。
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奈良美智展 done did奈良美智展 done did

会場:パルコギャラリー
   愛知県名古屋市中区栄3-29-1名古屋パルコ西館7階
会期:1999年12月3日(金)〜12月30日(木)
開廊:10:00〜21:00 
入場料:一般500円/学生400円 
問い合わせ先:Tel. 052-264-8370 パルコギャラリー

奈良美智展 HAPPY HOUR奈良美智展 HAPPY HOUR

会場:白土舎
   愛知県名古屋市中区錦1-20-12伏見ビル地下
会期:1999年12月1日(水)〜2000年1月15日(土)
開廊:11:00〜19:00  入場無料 
問い合わせ先:Tel. 052-212-4680 白土舎


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reportライターレポート

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お祭り広場にそびえ立つ「太陽の塔」 1970年、大阪万国博覧会会場
お祭り広場にそびえ立つ
「太陽の塔」1970年
日本万国博覧会会場

 年が明けて2000年。ミレニアムだとか、20世紀最後の年であるとか、非常に盛り上がっているが、1970年に大阪で開かれた日本万国博覧会から30年であるということも忘れてはならない。
 大阪万博と言えば、たいていの人が岡本太郎の「太陽の塔」を思い出すだろう。彼はテーマ館のプロデューサーとして、太陽の塔を制作した。昨年、彼の美術館が川崎にオープンしたり、現在、水戸芸術館で開かれている「日本ゼロ年」展で彼の作品が紹介されたりと、改めて岡本太郎が再評価されているようだ。
 しかし、この大阪万博で活躍したアーティストは、彼ばかりではない。横尾忠則は「せんい館」の建築をデザインしているし、イサムノグチは公園の噴水を作っている。手塚治虫、ミロ、ウォーホルなど、当時を代表する錚々たる面々が、この博覧会に参加している。さらに万国博美術館(建物は現在、国立国際美術館として利用されている)では、古今東西のアートが紹介されている。
 ところで今年は、この万博が注目される年になりそうだ。松下電器グループが埋めたタイムカプセルが今年開かれるのだ。当時、ナショナルのカラーテレビを買うとそのタイムカプセルのミニチュアがプレゼントされたので、覚えている方もいるかもしれない。
 松下電器グループが出展した「松下館」では、「伝統と開発」をテーマに、タイムカプセルと、そこに入れる収納品、さらに技術を駆使したタイムカプセル制作の過程が展示された。 
 そのタイムカプセルが埋められたのは、大阪城本丸。二つのタイムカプセルが埋められ、下部の一号機は5000年後の西暦6970年まで開封されないが、上部の二号機は30年後の今年、まず開封され、以後100年ごとに点検を受ける予定だという。 千年紀、ミレニアムと世の中騒いでいるが、このタイムカプセル、5つのミレニアムを越えて、6970年まで長い眠りについている。とりあえず今年は、その時を越える旅の途中、30年前からのメッセージが見られる年だ。

関連記事:1999-2000 対談「アートとそれを取り巻く状況をめぐって」 山盛英司 vs 村田真

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