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データにみるアート−6
約200店
太下義之

nmp8月21日号から不定期連載を開始したこの小文は、アートに関する統計・資料をひもとき、例えば「鑑賞料金」「参加者数」等の具体的なデータを取り上げて、それを話のマクラに芸術文化振興政策やアートマネジメント等についてコメントしていこうというものである。

今回のテーマは「ミュージアム・ショップ」についてである。残念ながら、この「ミュージアム・ショップ」に関しては、既存の調査や統計においては、その実態が把握されていないようであるが、そもそも全国には何店くらいのショップが存在するのであろうか。
ミュージアムとミュージアム・グッズの専門誌である『月刊ミュゼ』の山下治子編集長によると、我が国のミュージアム・ショップは、合計で約200店くらいある、とのことである。(とは言え、中には「ミュージアム・ショップ」という言葉を知らないショップも存在する、とのことではあるが……)。

さて、前回も述べたことではあるが、まだまだ一般の人々にとって美術館という存在は、「貴重な作品を見せていただく」ので「襟を正して作品を鑑賞する」というような感じの、どちらかと言えば権威主義的で、敷居が高い(公共)施設であると考えられる。
そこで、美術館と一般人との“溝”を埋めて、気軽に美術館に足を運ぶことができるような、さらには、美術館やアートについてもっと理解を深め、かつ親しみを感じることができるような仕掛けづくりが必要となってくる。
このような背景のもと、来館者が美術館をもっと楽しむことができるよう、また、潜在的なアート・ファンを掘り起こすためにも、付帯施設としての「ミュージアム・ショップ」の存在が注目を集めているようだ。
また、美術館を訪問する人々の目的や動機については、単に美術館に展示されている芸術作品を観ることだけではなく、近年においては美術館の付帯施設を楽しむという理由も増えているものと推測される。
実際、われわれの“美術館体験”を振り返ってみても、ミュージアム・ショップへの立ち寄りやミュージアム・グッズの購入は、展覧会の鑑賞と同等の、もしくはそれ以上の魅力ではなかったろうか。
ミュージアムショップにおいてグッズを購入することで、来館者は家庭(または職場)に「アート」を持ち帰ることとなり、楽しみながら、そして日常的に「アート」を再体験することが出来る。
つまり、ミュージアム・ショップにおいて、様々なグッズを販売することは、これらのグッズが美術館やアートに対して親しみを感じてもらうツールともなり得ることから、来館者のアートに対する理解を側面から手助けすることになるのである。
やや硬い表現で言うならば、ミュージアム・グッズを通じて美術館の持つ機能を外延化させることにもなるため、美術館の存在をより積極的にアピールし、アート普及のひとつの手法にもなるというわけである。
具体的な展開としては、来館者等を対象としたマーケティング調査を実施したうえで、絵はがき、ポスター、書籍、絵本、玩具、ステーショナリー、ゲーム、展示品や収蔵品の縮小模造等、様々なミュージアム・グッズを企画・開発していくことが望まれる。
ただし、このような展開のためには、当然のことながら高度なマーケティング力が要求されるため、単に美術館のスタッフだけではなく、マーケティングの専門家等の外部スタッフとのコワークが必要となってくるだろう。

最後に蛇足ながら、(まだいずこの美術館も実施していないとは思うが)入館者がかなり減少すると考えられる雨や雪等の悪天候の日には、ミュージアム・ショップが「絵はがきセット」を配布する等の“レイニーデイ・サービス”を実施するというのも、ひとつのアイデアではないだろうか。ぜひお試しあれ。

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