reviews & critiques ||| レヴュー&批評 |
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データにみるアート−4 | |||
「▲8.1ポイント」 | |||
太下義之 | |||
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nmp8月21日号から不定期連載を開始したこの小文は、アートに関する統計・資料をひもとき、例えば「鑑賞料金」「参加者数」等の具体的なデータを取り上げて、それを話のマクラに芸術文化振興政策やアートマネジメント等についてコメントしていこうというものである。 | |||
文化庁が平成5年3月に発表した『我が国の文化の動向に関する調査』の結果によると、関心のある文化の分野として最も多くの人(回答者の47.9%)からあげられていたのが「美術(絵画、彫刻、版画、工芸、書、写真など)」であった(n=1,088)。 この美術に対する関心については、年齢が高くなるにしたがって高まっていき、19〜29歳で「美術に関心がある」と回答した人は37.9%にとどまっているが、60歳以上の人については半数強の54.7%にまで高まっている。 また、過去1年間に直接展覧会場で美術鑑賞を経験した人の割合は45.6%となっており、こちらも美術に対する関心と同様に、年齢が高くなるにつれて鑑賞者の割合も高まるという傾向を示している。 そして今後の希望に関して、展覧会場等で美術を鑑賞したいと思っている人は回答者の48.3%であった。(他のジャンルについても言えることであるが)鑑賞経験よりも今後の希望の方が高くなっているわけだ。 この『我が国の文化の動向に関する調査』においては、上述したような一般人を対象とした調査と同時に中学・高校の生徒を対象とした意識調査も実施されているが、その結果には一般人の場合とはやや異なる傾向が見られる。 すなわち、過去1年間に直接展覧会場で美術鑑賞を経験した生徒の割合が20.5%(n=1,578)であるのに対して、今後鑑賞したいと思っている生徒の割合は12.4%(同上)となっており、実際の鑑賞経験に比べて今後の希望が実に8.1ポイントも低くなっている。 このような調査結果から、21世紀へ向けて美術鑑賞者のすそ野を広げていくためには、特に若い世代の人たちを対象として、美術と触れあい、体験する楽しさを伝えていくアウトリーチの仕組みを検討することが喫緊の課題であると言えよう。 調査報告書においては上記のような分析はなぜかなされていない。しかし、若い世代向けのアウトリーチに関して真摯に取り組まない限り、この「8.1ポイント」のマイナス分を埋めることはいつまでもできないであろう。 さて、同調査においては、生活地域における文化施設の認知度についても尋ねており、「あなたが暮らしている地域に『美術館、ギャラリー』はありますか」との質問には43.6%(n=1,088)の人が「ある(知っている)」と回答している。 この結果とは別に「あなたが暮らしている地域に『絵画や彫刻などの美術作品』はありますか」と質問をすると、「ある(知っている)」と回答した人はなぜか27.1%にまで減少してしまう。アートに関心を持つ者としては、実に考えさせられる結果である。 ちなみに同調査では、美術分野の職業芸術家(平面、立体、媒体美術、工芸、デザイン)を対象とした意識調査も実施しているが、こちらにおいても興味深い結果が出ている。 すなわち、「芸術文化振興のために国や地方公共団体に望むこと」として、「(美術館などの)文化施設を充実させる」と回答した美術分野の職業芸術家は34.6%(n=234)となっており、他のジャンルと比較して最も高い結果となっている。 以上の調査結果について、誤解を恐れずにややマンガチックに整理すると次のようなジレンマが浮かび上がってくる。すなわち、「われわれのまわりに既に多くの美術館が存在しているが、その中身は貧弱である。そしてその中身を担うべきアーティストは、さらに多くの美術館を要望している」。 世に言う“ハコモノ批判”とは、実は行政にとっての問題ではなく、実はアーティスト自身の問題なのかもしれない。 |
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