reviews & critiques ||| レヴュー&批評 |
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データにみるアート−8 | ||||||||
第1位 | ||||||||
太下義之 | ||||||||
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nmp8月21日号から連載を開始したこの小文は、アートに関する統計・資料をひもとき、例えば「鑑賞料金」「参加者数」等の具体的なデータを取り上げて、それを話のマクラに芸術文化振興政策やアートマネジメント等についてコメントしていこうというものである。
今回の『データにみるアート』は、ひとつの質問から始めてみたい。それは、「一般の人々が美術の展覧会に行く(または行こうとする)際にいちばん困ることは何か?」という質問である。 |
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カッコ内は順に、回答者の割合(%)、n=回答者数、複数回答 | ||||||||
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さて、我が国の美術展覧会については、周知の通り、新聞社やテレビ局等に代表されるマスコミが企画・制作主体となる場合が多く、当然のことながら広告宣伝媒体としても関与するため、一種のイベントのように美術展覧会の観客動員が行われる傾向にある。 また、バブル経済の時代以降、美術展覧会は全般的に大規模化する傾向があるが、その結果として観客動員数も飛躍的に増加し、なかにはラッシュ時の電車内のような混雑の事例もあったことが、このようなアンケート結果の背景にあるものと推測される。 さらに、このように美術展覧会が混雑する原因のひとつとして、閉館時間の問題もあげられよう。第3回においても指摘した通り、一般的な国公立美術館の閉館時間は、17時(最終入場は16:30)であるが、この時間では普通のサラリーマンやOLが会社帰りに気軽に立ち寄って美術鑑賞することはできない。必然的に社会人は土日に集中するわけである。 そこで、会社帰りにもサラリーマンやOLが美術鑑賞できるよう、平日の美術館の閉館時間を延長することにより、結果として土・日・祝日の混雑を多少なりとも緩和するという対応策もひとつのアイデアとして考えられる。 もっとも、このように混雑する美術展覧会は、印象派やルネサンス美術等、日本においてポピュラーな分野に限られており、一方で、現代美術展覧会等に関しては、美術館サイドのアウトリーチ活動の不足等もあり、ガラガラで人気のないケースが多い。 筆者はこのような静謐なホワイトキューヴを大変に快適に感じている一人であるが、アウトリーチの視点からみると、特に公立美術館において、多くの人々の税金で一部の鑑賞者のためにこのように快適な環境がつくられているという事実は大きな問題である。 現代美術の展覧会において、「美術館が混んでいて困る」という観客サイドの最大の課題が噴出し、展覧会の混雑に関する“うれしい悲鳴”を関係者があげることになるのは、果たしていつのことであろうか。 |
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