プライベートの旅行で札幌のモエレ沼公園を訪れる機会がありました。イサム・ノグチが遺したマスタープランをもとに造成された広大なランドスケープ。プレイマウンテンやモエレ山といった小高い丘を登り降りする上下の移動は、平坦な道を歩くのとはまったく異なる身体感覚を呼び覚ましてくれます。あえて小走りで、息を切らしながら登りきった丘の頂上で、たまたま居合わせた外国人観光客の方から「ここはすごく気持ちいいね! 風も景色も素晴らしい!」と興奮混じりに声をかけられ、思わず笑顔で応えた瞬間は、いまも鮮やかに記憶に残っています。

そんなモエレ沼公園の学芸員を務める宮井和美さんに執筆いただいた記事「さっぽろ天神山アートスタジオ──13年の軌跡から考える、アーティスト・イン・レジデンスのこれまでとこれから」を、先日公開しました。記事の舞台である「さっぽろ天神山アートスタジオ」もまた、緑豊かな天神山の丘の上に佇む施設です。美術館のように「完成した作品」を鑑賞する場とは異なり、アーティスト・イン・レジデンスの醍醐味は、まだ形にならないリサーチや制作の途上で、市民とアーティストが同じ時間を過ごす点にあります。坂道を上った先にある風通しのよい場所で、出自の異なる人々がふと居合わせ、素朴な感情や言葉を交わし合う──筆者がモエレ沼の丘の上で体験したあの開かれた高揚感は、天神山アートスタジオが13年にわたって大切に紡いできた営みとも、どこか共鳴しているように思えます。

札幌に流れる創造の気風と、これからのアーティスト・イン・レジデンスの可能性について、宮井さんの言葉とともに思いを巡らせていただければ幸いです。(h)


モエレ沼公園にて[筆者撮影]