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学芸員レポート
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「塩田千春」展
大阪/国立国際美術館 中井康之
塩田千春
塩田千春展会場(京都精華大学ギャラリーフロール)
 京都市内には多くの美術系大学があるのだが、中でも京都市の北部に位置している京都精華大学を訪れる際には、長閑な田園風景の広がる場所にあるため小旅行に来たような気分に何時もさせられる。その付属施設であるギャラリーフロールの展示空間も、普段は大学の施設然とした少し緊張感を欠いた、よく言えば時間の制止したような超然とした雰囲気を漂わせた場所であるのだが、そこで、塩田千春の大規模な個展が開催されていた。
 通常の展示状況とは異なり、抑制された光源を背景に、無数の小さなガラス窓が行く手を塞ぐように積み重なりあったその展示空間は、極めて緊迫した危険な匂いのする雰囲気を醸成していた。よく見ると、人が通れるような小径がつくられ、まるで洞窟の中へ誘われるように、その薄暗い迷路へと進んで行くことになる。最初の窓ガラスによる障壁をくぐると、洞窟のようにと形容した暗闇の実態が、黒い糸で複雑に張り巡らされた部屋のような空間であることに気づくのである。そしてその黒い糸が張り巡らされた空間の中央には、真っ白いリネンが用いられた病院用のベッドが仄かに見えている。さらにその先には水が流れ続ける洗面所があり、泥で汚れた白いタイルの部屋へとつながっている……。
 以上のような構成は、塩田の作品に対する知識がある程度備わっている者であるならば、予想の範囲内であったのかもしれない。しかし、私自身はこの時初めて、黒い糸を張り巡らせたベッドで眠るパフォーマンスを行なったことがある、とデータとして知っていた作品の意味を、実際のインスタレーションを眼前にすることによって実感したのである。ベッドを用いるという点で、キーファーの《革命の女たち》という鉛の板で覆われたスチール・ベッドの作品等を類推させる点が気になっていたのだが、塩田のその作品には、何かを剽窃した作品に感じられる、ある種の弱さのようなものは感じられず、徹底した強度を持ち得た作品であることを看取った。
このような、死の記憶を呼び起こすような作品に対して、違和感を覚えることなく、ある種のリアリティーを我々が感じ取るようになってきたのは、平和ボケと言われてきた日本に於いても、日常的な生活の中に偏在する死を実感するような出来事が頻発するようになってきたことと無関係ではないだろう。洛北の一見平穏な風景の中に現れた不気味な光景という対比的な関係も含めて、作家という存在が優れてそのような時代状況を映し出す媒体であるということを、あらためて実感させてくれたインスタレーション作品であった。

会期と内容
塩田千春展――WhenMind Become Form
会期:2005年4月23日(土)〜5月29日(木)
会場:京都精華大学 ギャラリーフロール
京都市左京区岩倉木野町137 Tel. 075-702-5343

[なかい やすゆき]
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