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甲斐すみ子展
1/29〜2/3 番画廊[大阪] |
季節の花々や実で靴を作りそれを撮影したシリーズと、花びらで箱を作り日光と月光の下で撮影した新作を出品。まず、花で靴を作るというアイデアが面白い。作品は触れた途端に壊れそうな可憐さを漂わせるが、咲き誇る状態と枯れた後の状態の2点を併置する事で、人生の移ろいなどの深みある主題も内包している。また、神話などに見られる、神の足跡や亡骸から新たな生命が誕生する記述を連想したりもした。
[1月29日 小吹隆文] |
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居城純子展 入れ子の庭
1/29〜2/10 大阪府立現代美術センター[大阪] |
昨年秋にアメリカで滞在制作した際に出合った干潟の風景を、194×584センチの大画面に描いている。絵の一部は画面から剥がされて地面に点在し(実際はキャンバス上に別の布を貼って描き、後で剥がしている)、その周辺には干潟に遊びに来た人々よろしく小さな人形が多数配置されている。キャンバス上の余白と画面から飛び出した部分が複雑なパースペクティブを形成し、見る側はさまざまな姿勢や視点で空間の把握を試みることになる。まるで絵画空間の中に入り込んだかのような不思議な絵画体験だった。他には絵画の小品3点と、アメリカで制作した映像作品2点も出品された。
[1月29日 小吹隆文] |
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内野雅文 Photo works 1996-2006 『アイドル』
1/26〜2/6 ギャラリー176[大阪] |
内野の10年間の活動を振り返る展覧会シリーズ。昨年5月から断続的に開催され、6回目の本展が最終回となる。「アイドル」と聞けば当然芸能界のタレントを連想するのだが、さにあらず。写っているのは都市の雑踏を行き交う群像だ。なんでアイドル? しかし、よーく見ると必ず写り込んでいる物がある。ミッキーマウスとルイ・ヴィトンだ。日本人のブランド好きは今に始まった事ではないが、現実に展開されるポップアート的状況を改めて見ると、つい自虐的な笑みを浮かべてしまうのであった。
[2月2日 小吹隆文] |
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毛原大樹 都市のカタログ展
1/29〜2/3 gallery-58[東京] |
日本の一般的な都市風景を描写しようとしたとき、メディアが写真であれ平面であれ、必ず画面に映りこんでくる典型的なアイテムがいくつかある。そのなかからどこの家屋にも等しく取りつけられている八木アンテナに注目したのが毛原の個展だ。毛原によれば、このうちVHFアンテナは東京タワーに、UHFアンテナは横浜のランドマークタワーに必ず向けられているという。ということはつまり、八木アンテナの向きさえ確認することができれば、自分がどこにいようとも、おおかたの居場所と方角を把握することができるというわけだ。じっさい会場に置かれた八木アンテナはそのような方角を向いて展示されている。そこにコートが掛けられているのは、迫りくる地デジ放送の開始により大量のVHFアンテナが廃棄される事態を想定して、それをコート掛けや物干しとして再利用することを提案しているからだ。ここにあるのは日本的な心象風景が消え行くことへの郷愁や廃棄物の健全なリサイクルを訴える青年の主張というより、都市そのものを使いこなすというポジティヴな発想である。八木アンテナを方位磁石として使うように、余ったアンテナを衣文かけとして使うように、都市の構成部位を徹底して利用の対象としてみなす、ある種のブリコラージュの視点が毛原の特徴だ。ただ、器用仕事が専門的技術というより誰でも日常的に行っている基本的な身体所作であることを考えれば、毛原のアートはスノッブですかした感じの現代アートではまったくない。それとは正反対に、庶民のアートというか、いわば小文字aのアートなのだ。
[2月2日 福住廉] |
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