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大西伸明展 Desktop, Dress, Gray
2/10〜3/10 ノマル・プロジェクトスペース[大阪] |
樹脂で出来た本物そっくりのテトラポッドや脚立、樹木、動物の骨などが並んでいる。いくつかの作品は一部が透明のまま残されているのでフェイクと分かるし、別の物は奥行きが欠けていることからやはりフェイクと分かる。ここで本物と偽物の境界線、あるいはもうひとつのリアリティが主題だろうと予測するのだが、大西のメッセージはさらに深い。何が真実で何が嘘か、そもそも真実なんてあるのか、そんな曖昧模糊とした世界に折り合いをつけ、少しでもリアリティに近づくこと。作品はそんな行為の集積なのである。不透明な現代を生きる人間の誠実な態度が感じられる展覧会であった。
[2月10日 小吹隆文] |
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オープンスカイ2.0|八谷和彦
12/15〜3/11 ICC[東京] |
ひとりで乗れるパーソナル・ジェット・グライダーを制作する、現在進行中のプロジェクトを見せる展覧会。多くの場合、プロジェクトの過程を見せる展覧会は山積みにされた資料を黙読させたり、ドキュメント映像を無邪気に垂れ流したりして、味気のないものになりがちだけれど、この展覧会はそうしたトラップにはまることを免れている。それは、じっさいにフライト・シミュレーターを用いて飛行感覚を体感できる体験型の展示構成に工夫が見られるからだけではなく、なによりも「ぼくらが一番ほしいと思うタイプの飛行機を自分たちの手でつくろう」というコンセプトの磁力が強いからだろう。大空を自由に飛び回るという空想は、誰もが一度は思い描いたことのある普遍的なファンタジーであるだけに、その訴求力は絶大だ。とはいえ、このプロジェクトの魅力は夢物語の実現に果敢に挑む、ドン・キホーテ的な性格にあるのではない。そうではなく、国家によってガンジガラメに規制された上、戦争と巨大資本に蹂躙されるがままの大空を自分たちの手に取り戻すことこそ、このプロジェクトの醍醐味である。それは、たとえば自動車に占有されている道路を路上パーティーによって取り返すreclaim the streetや自転車によって奪い返すcritical massのような活動に近いといえる(日本には高円寺の「素人の乱」がある)。ファンタジーがファンタジーの強度を保ちつつ、同時に広い意味での政治的な実践に接続していること。相矛盾するかに見える両者を無理なく両立させているという意味で、オープンスカイはきわめてラディカルなアートなのだ。
[2月10日 福住廉] |
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池田啓子展
1/20〜3/3 ギャラリーヤマグチ クンストバウ[大阪] |
光を用いた作品で知られる池田だが、今回の《light works》シリーズではいよいよ極まり、素材は光と蛍光性のアクリルガッシュのみ。画廊壁面に塗料を塗りブラックライトを当てると、薄ぼんやりしたブルーの平面作品が出現する。他には、焦点をずらした2灯のライトによる作品や、径の異なる2枚のガラス板を用いた作品も。光学原理を利用し、最小限の仕掛けで深みある表現を作り出す手腕に感心した。
[2月13日 小吹隆文] |
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公募 京都芸術センター 2007 池上恵一[身体生圧]/八嶋有司[P.A]
2/4〜25 京都芸術センター[京都] |
体の凝りを主題に独自のジャンルを構築する池上恵一と、自分が住む室内をシリコンでかたどり、表裏逆にして再構築する八嶋有司。156件の応募のなかから二人が選出された。審査員は鷲田清一である。自他の境界線を身体内部の凝りから考察する池上と、プライベートとパブリックの領域を侵犯させ合う八嶋の表現は、ある種の共通性を感じさせつつもターゲットは異なる。それを「日常のごくありふれたリアルの感覚に突入しながら、そのリアルをかたちづくるアンリアルに触れようともがいている」(カタログより抜粋)との解釈でひとつに収斂させた点が本展の醍醐味であろう。それぞれの作品は勿論、キュレーションにも注目である。
[2月15日 小吹隆文] |
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ヒロセガイ エキシビジョン
2/19〜24 番画廊[大阪] |
トーテムポール? 楼閣? 民俗学の収集品? そんな変てこオブジェがスポットライトを浴びて並んでいる。丸ノコを用いた角材からの一木造だが、程よく雑で、でも実は技ありな加工技術。なんと頭頂部はモーターでくるくる回っているではないか。作者は超古代文明の遺品を作る感覚でこれら作品を作ったらしい。なんとも意味不明な代物だが、その突き抜けっぷりは気持ちいい。今後も洗練させることなく突き進んで欲しい。
[2月19日 小吹隆文] |
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