小吹隆文/福住廉 |
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6/7〜6/11 |
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大西康明展「表裏の隙間」
6/6〜7/1 PANTALOON[大阪] |
半透明のポリエチレンシートが扇風機の風を受けてフワフワ上昇と下降を繰り返したり、風船に吊られ鉄道模型に引っ張られて旋回している。別室の作品は、鏡面のドーナツ状のシートが蛍光灯に通され、小さなファンの風を受けてゆらゆら回転を続けている。そのルーズな反復から何故か目が離せない。大西の主眼はオブジェの形態ではなく、それらによって起こる空間の異化作用。表側にばかり気を取られて見えてこないものの裏側やその中間が、作品を通して認識される。チープな素材ゆえ一見安っぽいが、じつは奥深い作品であった。
[6月7日(木) 小吹隆文] |
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水野亮 物置
5/22〜6/8 武蔵野美術大学民俗資料ギャラリー[東京] |
武蔵野美術大学が所蔵する民俗資料を活用した個展。古い箪笥やちゃぶ台、籠など生活民具のあちこちに「名無し」と名づけられた紙粘土製の小さな造形物が置かれている。引き出しを開けると、そのなかにも「名無し」が入り込んでおり、古色を帯びた生活民具と控えめな造形物が共鳴しあいながら、ありし日の暮らしの記憶が紡ぎ出されているかのようだ。けれども、引き出しを開け続けていくうちに気がつかされるのは、思っていた以上に「名無し」がいたるところに隠されているということだ。一見すると民俗資料の「物置」にしか見えないが、眼を凝らすと「名無し」が点在しており、より積極的に探し出してみると用意された生活民具の総数をはるかに上回る「名無し」の見えざる存在感に圧倒され始める。見た目はいたって凡庸な日常がわずかなきっかけによって革命的に変容する瞬間を、水野は豊富な民俗資料を借りて仕込んでいたのではなかったか。面白いのは、水野がそれを作品の「質」ではなく、むしろ「量」によって表現しようとしている点だ。
[6月8日(金) 福住廉] |
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風間サチコ
5/11〜6/9 無人島プロダクション[東京] |
風間サチコの版画展。モチーフとなっているのは、日本の高度成長期のイデオローグ・田中角栄で、姿形を変えながらいたるところに角栄の残像が表されている。それは30年前の心象風景というより、その負の遺産に苛まれている今の日本のありようそのものだ。版画独特のテクスチュアと陰影表現が広がりを欠いた閉塞感を効果的に表していることを考えれば、低成長期の日本の風景を描き出すには、版画というメディアが最適なのかもしれない。
[6月8日(金) 福住廉] |
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玉村升一展
6/8〜16 スペースギャラリーラウンディッシュ[大阪] |
動物とも妖精ともつかない不思議な生き物たちを描いたドローイングを多数出品。洗練され、デザイン係数の高い過去作から一変したので驚いたが、実は以前から下絵としてドローイングを描いていたらしい。小気味よいタッチや描き込みと余白のバランスなどツボを心得た作りで、作者の地力と絵を見る楽しさが十分に味わえる。敢えてドローイングに光を当てたギャラリーの作戦勝ちだった。
[6月11日(月) 小吹隆文] |
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