小吹隆文/福住廉 |
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6/16〜6/19 |
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ダイアローグ コレクション活用術VOL.2
6/16〜7/29 滋賀県立近代美術館[滋賀] |
伊庭靖子、児玉靖枝、佐川晃司、渡辺信明の4画家にそれぞれ一室を任せ、自作と館蔵品を用いて展示プランを作らせた企画展。伊庭は視覚的質感を、児玉は戦前までの日本画が有していた大いなる可能性を、佐川は時間や身体性をともなった絵画と風景の関係性を、渡辺は花をモチーフにした作品による百花繚乱をテーマに、それぞれ魅力ある空間を作り出した。通常の展覧会が作家、作品と観客の関係性に止まるとすれば、本展では美術家、作品、館蔵品、美術館、そして観客の間でダイアローグ(対話)が交わされ、より複雑な関係性が構築される。結果、驚くほど豊かな美術体験がもたらされるのだ。昨今、美術館を巡る厳しい台所事情から、館蔵品を用いたさまざまな企画展が行なわれている。本展はそのなかでも非常にユニークかつ成功した事例として評価されるべきものと言えよう。
[6月16日(土) 小吹隆文] |
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北城貴子展 Remain in Light
6/16〜7/14 ノマル・プロジェクトスペース[大阪] |
昨年の7-9月に大原美術館のレジデンス・プログラムに参加して描かれたドローイングの連作42点を中心に展示。近年の北城は風景からエッセンスを抽出し たような点描画が持ち味だったが、ここではストレートな具象から半抽までさ まざまなスタイルが顔を覗かせている。いずれも滞在先の森や湖水が描かれて おり、空気や匂いまで伝わってきそうな瑞々しさが大きな特徴。視覚のみなら ず皮膚感覚に訴えるような艶かしさが感じられるのも興味深い。彼女の創作的 ベースが明らかにされた個展であり、一種ターニングポイント的な機会とも言えるのではなかろうか。
[6月16日(土) 小吹隆文] |
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アートで候。会田誠 山口晃
5/20〜6/19 上野の森美術館[東京] |
「現代アート界のツートップ」、会田誠と山口晃の二人展。全体的には、高度な画力を誇る両者による描写の魅力を存分に味わうことができた。あえて大げさに言えば、本展は具象表現(というよりむしろ会田にならって「イラストレーション」というべきか)の「輝かしい勝利の記念碑」である。だが、会田の出品作品の選定には少なからず疑問が残った。イラストレーションの勝利を祝うには、何を差し置いても、彼の代名詞ともいうべきエログロ系イラストを見せなければならないからだ。(屁)理屈こねこね大好き人間である浅田彰や岡崎乾二郎をおちょくることは良いとしても(その仕事を美術批評家が放棄し、無邪気なキュレイターやエディターが彼らの物言いを鵜呑みしているからこそ、会田がそうせざるを得ないのだが)、それが結果として《切腹女子高生》や《巨大フジ隊員VSキングギドラ》、あるいは《ミュータント花子》といった優れたイラストを見せなかったことと表裏一体の関係になってしまっているように思えてならない。ツートップ、すなわち点取り屋だというのであれば、もっとガツガツと貪欲な姿勢を見せてよいはずだし、それが本来の姿であることが知られているだけに、本展における会田はおとなしく飼い慣らされてしまった印象が否めなかった。新作の《万札地肥瘠相見図》は、巨大なわりにはイラスト表現の醍醐味がまるで伝わってこなかったし、《滝の絵》で描かれているスクール水着の少女たちは「少女」というのが憚られるほどロリコン度が抑えられていた。まるで、いちおう盛り上がるには盛り上がるが、決定力に乏しく、圧倒的な強さや美しいゴールシーンとは無縁な、つまりは野性に欠けた「日本代表」みたいだった。会田誠を老成させるには、まだ早い。
[6月16日(土) 福住廉] |
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開発好明 田中一展
6/18〜6/30 GALLERY NATSUKA[東京] |
日本人の凡庸な名前であり、漢字圏以外の人びとの眼にはきわめてシンメトリックな記号として映る「田中一」。会場には蛍光灯を組み合わせた「田中一」という形のインスタレーションと、実在の「田中一」氏を探し当てるドキュメンタリー映像が展示されていた。いろいろな紆余曲折を経て、最終的には90歳代のマラソンランナーである「田中一」氏に出会うのだが、「ふつう」であることを追求しながらも、「ふつうではない」ものに到達してしまう逆説がアートの醍醐味にほかならないことを、開発は示していたようだ。
[6月19日(火) 福住廉] |
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小川陽──線香火によるドローイング
6/5〜6/23 ギャラリー舫[東京] |
小川陽は和紙に線香の火で穴を開け、それを連続させて線描を、断続させて点描を描き出す。数年前に同じ作品を見たときは気がつかなかったが、連続的な線描と断続的な点描にはそれぞれ異なるリズムが感じられ、その線や点が音符を描いているように見えた。その意味でいえば、きわめて音楽的な快楽に満ちたドローイングである。和紙の下に細い紐を封じ込めた別の作品も、そのテクスチュアから通底音が響いているかのようだった。
[6月19日(火) 福住廉] |
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平山郁夫版画展──ユネスコ世界遺産活動支援
6/15〜7/1 銀座教文館9階ウェンライトホール[東京] |
いわずと知れた平山画伯の版画展。おなじみの朦朧とした画風にとくに見るべきものはないけれど、なにより瞠目させられたのは、その価格。世界遺産の修復活動のためのチャリティ企画とはいえ、百万円単位のリトグラフ(!)がゴロゴロと展示され、おまけに加山又造や片岡球子、千住博といった「大御所」の作品も立ち並ぶ。会場でひそかにチェックして見たかぎりでいうと、最高価格は、もちろん平山画伯が雲岡遺跡を描いた作品で、2,940万円なり。
[6月19日(火) 福住廉] |
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