小吹隆文/福住廉 |
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7/24〜7/28 |
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勅使河原宏展──限りなき越境の軌跡
7/14〜10/8 埼玉県立近代美術館[埼玉] |
勅使河原宏の没後、初の本格的な回顧展。晩年のいけばなから、書、竹のインスタレーション、映画、絵画へと、彼の旺盛な創作活動を時代的に遡行する構成となっている。いけばなや書、竹のインスタレーションが充実している一方で、映画や絵画の展示が手薄だった印象は否めなかったが、それでもさまざまなジャンルをほぼ独学で渡り歩いてきた勅使河原の軌跡をしっかりととらえることができる展示になっていた。それが新鮮に見えるのは、勅使河原が実践していた「越境」や「実験」がすでに色あせつつあるということなのかもしれない。
[7月24日(火) 福住廉] |
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泉沢儒花×Tattaka展
7/14〜7/29 白瀧呉服店[東京] |
呉服屋の店内を会場とした展覧会。風情のある庭園、剛健な建物、そして雅な呉服の数々。展覧会がなければまず足を踏み入れなかったであろう店内を観察できただけでも有意義だった。しかし、展示された作品が、そうした空間の特性とどのような関係を切り結びたかったのか、把握することが難しかった。
[7月27日(金) 福住廉] |
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耀樹孝鷺鶯 BILLY IN BERLIN 3
7/17〜7/28 gallery福果[東京] |
マンガをベースにした絵画作品を制作している耀樹孝鷺鶯の新作展。近年の作品には必ず登場するBILLYというキャラクターをもとに、意味を限定しない自由な物語空間を創り出した。鶯が優れているのは、彼が年間3〜4回も個展を開催しているということと、そのたびに新たな技法や展開を見せてくることだ。今回は油性インクを塗り固めた線によって、じつにシンプルな画面を構成していた。世間ではどういうわけか寡作という芸術的神話がいまもはびこっているが、Chim↑Pomにしろ泉太郎にしろ鶯にしろ、優れたアーティストはまちがいなく多作であり、その都度その都度、新鮮な驚きを与えてくれる。若いアーティスト予備軍は、口うるさいわりにはなにも書かない美術評論家なんか相手にしないで、このように盛んに作品を発表しているアーティストたちを模範としなければならない。
[7月27日(金) 福住廉] |
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エルネスト・ネト展
7/15〜10/8 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 [香川] |
巨大なテント構造の空間には、柔らかい光に包まれた有機的世界が広がっていた。大小さまざまなクッションに身をうずめたり、2色の布が昆布の様に垂れ下がる背の低い空間を通り過ぎたり、垂れ下がるしずく状のオブジェを触ったり、いろんな方法で空間を体感できるのが心地よい。他にも、らせん状の通路の奥に繭型の照明があったり、2種類の香辛料を大量に詰めた巨大な袋(作品全体を支える重りでもある)から立ち上る香りに鼻を刺激されたりと、まさに五感と体全体を使って作品とコミュニケートする感じ。非常にとっつきやすく、観客がリラックスして空間と戯れている様子が印象的だった。特に子供たちは大喜びで、飛んだり跳ねたり眠りこけたり。それを見ているこちらまでハッピーな気分になってくる。「やられた!」って感じの好企画。地元以外の人も出かける価値十分あり。
[7月28日(土) 小吹隆文] |
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