小吹隆文/福住廉 |
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7/31〜8/6 |
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岡田裕子 愛憎弁当
7/18〜8/11 MIZUMA ART GALLERY[東京] |
岡田裕子の新作展。「愛憎」とは母が子にたいして抱く複雑な感情を指しているが、岡田は米国在住の日本人料理研究家に扮したうえで、「愛憎」にあふれた日本式の弁当のレシピを当地のケーブルテレビ番組で紹介するという架空の物語を演じている。会場にはそのテレビ番組の映像と、レシピを描いたドローイングが展示されていた。社会的モティーフを笑いとともに巧みに取り入れるという点では、これまでの岡田の作風と違わないものだったとはいえ、今回はなぜか「すべった感じ」が否めなかった。それは愛憎弁当のレパートリーが直線的で単調だったせいかもしれないし、テレビ番組にアート関係者を出演させていたのがいかにも内輪だけで盛り上がる楽屋芸としてしか見えなかったからなのかもしれない。あるいは、母と子のあいだの愛憎関係が、かつての《Singin'in the Pain》や《俺の生んだ子》といった優れた作品に見られた社会的な広がりを欠いていたからなのかもしれない。愛憎という関係性が、本来的には母と子に限られたものではなく、親密な社会関係であればどこにでも見出すことのできる普遍的なものだけに、残念でならない。
[7月31日(火) 福住廉] |
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西野達
7/11〜9/24 森美術館ギャラリー2[東京] |
森美術館の展示室のひとつを使った西野達の新作展。空中美術館の一角から眼下に広がる庶民の街を映し出したビデオカメラのモニターを見ると、小さなビルの屋上に大きな時計台が備え付けられているのが見え、その時計が展示室の時計とシンクロしているという作品。内と外を反転させたり、共鳴させたりする手法は、西野の十八番といえるが、今回の作品はどうにもこうにもおとなしい。それは、おそらく森美術館という権威的な空間をいじることなく、作品を成立させようとしたからではなかったか。昨年銀座のエルメスで催された個展ではエルメスの権威を根底から覆しかねない作品を見せていたからこそ面白かったのに、今回の作品では森美術館の権威は最初から傷つけられることなく温存されていた。幸か不幸か、結果的に森美術館のパターナリスティックな振る舞いだけが際立ってしまっていたが、要するにエルメスの器の大きさには適わないということだろう。
[7月31日(火) 福住廉] |
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三木陽子 [Kitchen]
7/28〜8/26 ヴォイス・ギャラリーpfs/w[京都] |
お皿にネズミが走っていたり胎児の頭部が浮き上がるなど、シュールさが持ち味の陶オブジェを多数出品。画廊中央のテーブルに食器の作品を集中させ、壁面には割れたタイルやねじれた配管によるインスタレーション的展示をした結果、誰かの部屋を再現したかのような奇妙なリアリティを持った空間が出現した。日常と地続きの異次元。そんな独特の世界観が面白い。
[8月1日(水) 小吹隆文] |
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カワイオカムラマ
〜サマータイム・ブルース・アニメーション〜
8/5〜26 京都芸術センター[京都] |
「ヘコヒョン」という謎の言葉を軸に展開される彼らの世界はナンセンスの迷宮。映画を見るようにストーリーを追うと必ず失敗して、頭の中が疑問符だらけになってしまう。散りばめられた断片をパズルの様に組み合わせて自分なりのリアリティを模索する行為そのものに意味があるのだと初めて気付いた。これまで歯が立たなかった作品に一応の着地点を見つけられたのは収穫。ただし、その解釈が彼らの意図するものかどうかは分らないが……。
[8月6日(月) 小吹隆文] |
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