バックナンバー
2019年08月01日号のバックナンバー
フォーカス
『羅生門』から『赤毛のアン』へ──高畑勲の演出が音楽にもたらすもの
[2019年08月01日号(細馬宏通)]
2018年に逝去したアニメーション映画監督・高畑勲の演出に焦点をあてた回顧展が、現在、東京国立近代美術館で開催されている。ジェスチャー、アニメーションの研究者であり、『今日の「あまちゃん」から』(河出書房新社、2013)、『二つの「この世界の片隅に」─マンガ、アニメーションの声と動作』(青土社、2017)など、テレビドラマや映画の映像・音楽・演出の緻密な解読で知られる細馬宏通氏に、この展覧会を構成する作品のひとつ『赤毛のアン』について寄稿していただいた。(artscape編集部)
【イルクーツク】共鳴しあう都市と絵画と音楽
[2019年08月01日号(多田麻美)]
欧米はもちろん、首都モスクワからも遠く離れた場所にある内陸都市、イルクーツクの作家たちの強みは、表現者に必要な環境や刺激をしっかりと得られると同時に、流行りの概念や手法に影響され過ぎずにも済むということだろう。そんな豊かで自由な創作環境のなかで、作家たちはときに外来のロックやクラシック音楽、ときに土着的な要素や時代背景などに影響されつつ、自分なりの表現の境地を切り開いている。
キュレーターズノート
公立美術館において開催される漫画、アニメ展に関する一考察
──「富野由悠季の世界」展と「シド・ミード展 PROGRESSIONS TYO 2019」
[2019年08月01日号(工藤健志)]
最近、漫画やアニメ、ゲームの展覧会が増えたような気がして、ちょっと気になって調べてみた。勤務している青森県立美術館でもマスコミの主催で近年開催された展覧会(いわゆる「貸館」というやつですね)は2015年度が「誕生60周年記念 ミッフィー展」、2016年度が「みんな大好き!!トムとジェリーの愉快な世界展」、2017年度が「エフエム青森開局30周年記念・連載30周年記念 ぼのぼの原画展」、「蒼木うめ展 in 青森」、そして昨年が「シンプルの正体 ディック・ブルーナのデザイン展」、「誕生15周年記念 くまのがっこう展」、「新海誠展『ほしのこえ』から『君の名は。』まで」と、いわゆるアニメやキャラクターの展覧会ばかりだったことに改めて驚いてしまった。
ガラパゴス化したリアス・アーク美術館
[2019年08月01日号(山内宏泰)]
読者のなかには、2014年から2018年にかけて、尾道、東京、名古屋を巡回した「リアス・アーク美術館 東日本大震災の記録と津波の災害史」展を覚えていらっしゃる方も少なくないだろう。震災から8年、記憶の風化と復興事業による地域の変化のなか、リアス・アーク美術館はまさに方舟(アーク)のように大津波の記録を後世に届けようとしている。今号より、副館長・山内宏泰氏に「キュレーターズノート」を執筆いただく。(artscape編集部)
曖昧なものを鑑賞すること──展覧会「美術館まで(から)つづく道」
[2019年08月01日号(田中みゆき)]
茅ヶ崎市美術館で、展覧会「美術館まで(から)つづく道」が開催されている。これまであまり例がない、インクルーシブデザインの手法を用いたフィールドワークから生まれた表現を展示した展覧会だ。フィールドワークには聴覚障害者や視覚障害者、車椅子ユーザーらが参加し、彼らの「障害」に注目するのではなく、彼らを「感覚特性者」と呼び、視覚、聴覚、触覚、嗅覚などさまざまな感覚を用いて鑑賞する作品が主に展示されている。障害のある人とプロジェクトを行なう者として大きな共感を持って体験したと同時に、表現を鑑賞する際の対象について改めて考えさせられる展覧会だった。
トピックス
[PR]徳川美術館に聞く! 学芸員インタヴュー
「合戦図─もののふたちの勇姿を描く─」
[2019年08月01日号(薄田大輔/内田伸一)]
名古屋城からバスで約15分。徳川美術館は、尾張藩2代藩主の徳川光友が隠居した御屋敷跡の緑豊かな一画に、日本庭園の「徳川園」、尾張徳川家伝来の古典籍を収蔵する「名古屋市蓬左文庫」とともにある。御三家筆頭の尾張徳川家が受け継いだ宝物を所蔵し、その大名文化を後世に伝えるべく、19代当主の徳川義親が1935年に開館。《源氏物語絵巻》ほか国宝9件を筆頭に1万件余の収蔵品を擁し、城郭を想わせる帝冠様式建築でも知られる。
国内外の歴史や美術好きに加え、近年は人気ゲーム/アニメ『刀剣乱舞』の影響で、同作の若いファンが名刀を見に多数訪れるなど、来場者も幅広い。歴史ある品ほど時代を超えて人々を惹きつける──そんな言葉を体現する同館がこのたび、絵画表現としての合戦図の歴史に迫るユニークな企画展を実現させた。「合戦図─もののふたちの勇姿を描く─」の担当学芸員である薄田大輔氏に、同展の挑戦と見どころを聞いた。
[PR]「見ること」「光や空間を把握すること」の不思議をめぐって
──「伊庭靖子展 まなざしのあわい」
[2019年08月01日号(木村重樹)]
7月20日より、東京都美術館にて開催中の「伊庭靖子展 まなざしのあわい」。作家みずからがモティーフをカメラで撮影し、その写真をもとに緻密な油彩画を描き上げるスタイルで、90年代半ば一躍注目を集めた伊庭靖子(1967-)。そんな伊庭の絵画や版画作品を中心に、今回初の試みとなる映像作品を合わせた合計52点が展示されている。
都内の美術館では初の開催となる伊庭靖子の個展。東京以外に範囲を広げても、2009年の「伊庭靖子─まばゆさの在処─」(神奈川県立近代美術館 鎌倉)以来、実に10年ぶりとなる。前回の展覧会が「開催時点までの創作活動の集大成」だったのに対し、今回の個展はここ15年以内に制作された近作・新作に絞られている。しかし、複数のシリーズが展示されており、それらを通覧することで、伊庭自身の美術家としての意識や関心事のゆるやかな変遷をも指し示す内容となっている。
ちなみに東京都美術館では2012年のリニューアルオープン以来、数年に一度のペースで活躍中の中堅作家の個展を企画してきた。そのなかで本展は「福田美蘭展」(2013)、「杉戸洋 とんぼ と のりしろ」(2017)に続く、3人目の試みにあたる。