橋詰宗: 2010年1月アーカイブ
先日、とあるロンドンのグラフィックデザイナー達との夕食会に参加しました。Åbäkeというデザイングループで現在とある機関のアーティスト・イン・レジデンスで東京に滞在中です。実は彼ら、僕がRoyal College of Artに留学していた時のチューターです。グループ名からして「どうやって読むの?」と思われる方もいらっしゃいますが、実は読みからして解釈は様々。「アバケ」、「オーベーク」、「オバケ」と人によって読み方も様々です。これまでも様々なデザインプロジェクトやDesignTideなどのイベントで来日していた彼らですが、今回の滞在は3ヶ月と長期間でこれからどんな活動をしていくのか非常に楽しみな人たちです。
ともすれば日本を含む文化圏や先進国においてデザインとは非常に表層的な観点から行われる事がありますが、彼らのアプローチはまったくその逆をいくもので、彼らのデザイン哲学においてはコンテキスト、リサーチ、日常、実践といったキーワードはとても重要なものです。
既に彼らのユニークな活動はスタートしていて、来日して成田空港から滞在先までまっすぐに向い、そこから一週間強の期間一歩も出ずにその環境を内部から知る、というプロジェクトを既にスタートしています。その一環で僕や他の友人・知人関連を招待しての食事になりました。実際にどうやって食事などは調達しているの?と疑問に思われるかもしれませんが、親しい友人達にしばらく差し入れをして貰っていたそうです(笑)。僕が日本には素晴らしい出前のシステムがあるよ!と伝えたらとても興味深そうにしていました。はじめは既に来日する前に日本の社会構造や問題をリサーチして、ひきこもりやニートといった問題を踏まえてのコンセプトだと思ったのですが、むしろ彼らがこれから長期間活動する拠点となるレジデンスの環境を内部からよく知るところからはじめよう、というコンセプトだそうです。
活動の拠点ロンドンにおいて彼らは非常にユニークなワークショップやレクチャーを頻繁に開催しています。日本でもお馴染みなものでは「Total Trattoria」という夕食会のイベントがありますが、これはプロダクトデザイナーで親交の深いMartino Gamperや知人達で開催された会で、出される食事はもちろんの事、使用される食器や机、その他必要なものを彼らがデザインをして友人を振舞う内容になっています。その様子が収録されたブックレットも出版されています。
先日の夕食会はマイ箸を持参で各自得意料理の具材を用意してその場で作る、という事になっていましたのでそんな彼らに喜んでもらえるものと思い、ユニークな野菜寿司の具材を用意してワークショップ感覚でみんなで楽しくお寿司を作りました。
彼らの基礎にある哲学や活動はいまの自分のに非常に大きな影響を与えています。それについては次回の投稿で書きたいと思っています。それまでに下記のURLにて彼らの活動やTotal Trattoriaについて読んで知ってみてください。
http://www.myspace.com/abakespace
http://www.dezeen.com/2008/03/10/total-trattoria-by-martino-gamper/
http://imomus.livejournal.com/124195.html
新年あけましておめでとうございます。
年始より暫くの間、artscape BLOGにて記事を書かせていただきます。多くの方が私が何をやっているのかご存じないかと思いますが、デザイナーとしてアートディレクション、グラフィックデザイン、ブックデザイン、ウェブデザインと言ったコミュニケーションに関わる活動をしております。
他のブロガーの方がアートに関連する仕事に携われている方の中でなぜデザイナーがブログを?と思われる方も多いかもしれません。いままではその専門領域に集中的に携わる方々が記事を投稿するブロクが多かったように思われます。実践の場においてもデザインや芸術の領域が必要以上に細分化され、その事が多くの可能性を狭めていっていたように思えます。多くの方々が持たれているその価値観が最近、急速に変わろうとしています。
私は現在東京を拠点に活動をしていますが、世界有数の大都市であるこの場所で創造的な活動や仕事に携わる方の並列なコミュニケーションがあまりにも少ないことをこれまでは痛感してきました。しかしゼロ年代という時代に社会に出て、ようやく精力的に活動を行うことができるようになった主に私と同世代の様々な領域の方々が色々な場所で新しい可能性を模索しようと動き始めているのを感じています。
それと呼応するようにアートと芸術、日常と非日常といった分節化されていたものも少なからず身の回りで関係性が変わってきています。私は主に建築やアート、ファッションという領域で活躍される方々や団体とお仕事をさせていただいていますが、これまでとは全くちがった関わり方や仕事のやりかた、アウトプットが生まれてきている事を実感しています。
例えばワークショップのカタログを単にデザインするだけでなく制作プロセスそのものをワークショップの文脈に落とし込んだり、ファッションカタログを制作する際にそれがどれだけエモーショナルなものとして、その人の日常と関わってくるのかを考える。このような形態やスタイルばかりに目をやるのではなく、デザインが社会・日常の中で時間軸や空間性を伴いながらあり続ける事を考慮することはもはや紙やモニターといった一元的な世界でグラフィックが語られる限界を示唆しているように思います。そしてその関係性を見つめる眼差しは他のデザインの領域や芸術においても共有される視点だと考えます。その点において私がデザイナーとしてアートの領域をメインにしながらもより横断的な考えをこの場で書くことができればと思っています。
それでは皆様よろしくお願いします。
最近のコメント