
当初、この欄には2回に分けて公開している記事「日本の巡回美術展のこれまで・これから」について書こうと思っていました。
ところが、7月28日に熊本で最大震度7の巨大地震が発生。つい4カ月ほど前、熊本市現代美術館の坂本顕子さんに「キュレーターズノート」で2016年の熊本地震のあとに美術館が果たした役割について書いていただいたばかりでした。
今回の地震は災害級の酷暑と重なり、避難先での停電、断水など、被災した方々はさらに過酷な環境に身を置かれていることが報道で伝えられています。
この記事を書いているのは8月初めですが、公開されるのはお盆休み明けです。その間にも何が起こるかわかりません。まさに現在進行形の渦中にある方々のことを思うと、不用意なことは書けないと思いつつも、やはり何かを書かずにはおられません。
以前、当時アーツカウンシル東京に在籍されていた佐藤李青さんに、東日本大震災後の東北と東京・神戸など、ほかの地域を結ぶネットワークやそこから生まれた活動について、「震災後から『災間』へ──複数の災禍に架橋するメディアをつくる」という記事を寄せていただいたことがあります。この活動のなかで「災間」の意味が「災いと災いの間」から「災いのなかを生きるということ」へとひろがっていったとあります。
熊本地震のみならず、フランスやスペイン等で起きている巨大な山火事、終わらない戦争、いま、全人類が災禍のなかを生きているのだと実感します。
佐藤さんの「自らが渦中にいることを自覚するのはしんどい。向き合わざるをえない事態は、ひとりではどうしようもないという無力感を抱いてしまうようなことでもある。だからこそ、誰かと手を携える必要がある。……災禍のあとには人が『ともに生きる』ための方法が生まれてきた。『被災者』というラベルからではなく、一人ひとりの個人と向き合うこと」という言葉が、この状況下で重みを増して感じられます。
いま、サイトを確認したところ、熊本市現代美術館は8月5日から一部再開されるとのこと。今回の熊本地震で被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げると同時に、その方々にとって美術館が心休まる場所になることをお祈りしております。
[追記]「その間にも何が起こるかわかりません」と書きましたが、8月13日に千葉県で記録的な豪雨が発生し、大きな被害が出てしまいました。「巡回展」の記事で取材させていただいた千葉県立美術館は15日にいったん休館され、翌日再開館されています。千葉市内も大きな被害があるなか、大変な作業だろうと思います。亡くなられた方のご冥福と、被害地域に1日も早く日常生活が戻ってくることを願っております。(f)